「トランプらしさ」を許すのは得策? 大統領が欠くリーダーの資質

(Photo by Jeff J Mitchell/Getty Images)

米大統領戦で、トランプ陣営の中心的役割を果たしたコーリー・ルワンドウスキとデービッド・ボッシーの新著『Let Trump Be Trump(トランプはトランプらしくさせておけ)』には、次のような一節がある。

「遅かれ早かれ、ドナルド・トランプの下で働く全員が、ある大統領の側面を見て『私はなぜ彼と働くことにしたのだろう』と思うような日が来る。トランプの怒りが個人攻撃として意図されていることは決してないが、そのようにしか捉えられないときもある。物事が自分の期待通りに進まないときの機嫌の変わりようは、まるで全面攻撃のように感じる。どんなに強い人間でも、バラバラに砕けてしまう」

念を押しておくが、この文章を書いたのは、トランプ陣営の選挙活動で幹部を務め、彼の人格について楽観的な見解を持っている人々だ。同書の題名は、ロナルド・レーガン元大統領の長年の友人であるウィリアム・クラークの「Let Reagan be Reagan(レーガンはレーガンらしくさせておけ)」という発言をもじったものだ。この言葉は、レーガンに台本通りの言動を取らせることを望んでいた他の側近たちへの警告として発せられた。

レーガンがトランプと違うのは、彼がハリウッドで成功した後に米国最大の州であるカリフォルニアの州知事に就任した愛想の良い男だったという点にある。政治の専門家ではかったものの、人生を通して貫いてきた深い価値観を持っていた。台本通りの言葉を言わせることもできただろうが、彼自身が優秀なライターであり、側近よりも深く聴衆(有権者)のニーズを理解していた。

それとは対照的なトランプは、特殊な人物だ。裕福な家庭に生まれ、父親と自身の度胸のおかげで富をさらに拡大した。政治家になったのは2015年のこと。卓越したビジネスマンであることが売りだが、この名声は自分自身で広めたやり手の実業家としての虚像に基づいているところが大きい。これまでに6回も倒産を経験しているのにもかかわらず、「成功者」としてのイメージを損なうことはなかった。
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編集=遠藤宗生

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