「ニューヨーク・タイムズ」の付録雑誌「ニューヨーク・タイムズ・マガジン」でアソシエイト・エディターを務めるジャズミン・ヒューズ(26)は、自身が執筆する際も、他人の書いた原稿を編集する際も、多様な人々の声を反映させることに心を砕く。2017年、ヒューズは同誌で初めて特集記事を手がけたほか、さまざまな書き手が個人的に推薦したい事柄について綴る人気コラム「Letter of Recommendation」の編集を担当した。
だが、彼女のよりユニークな功績は、有色人種のライターと編集者をつなぐデータベース「ライターズ・オブ・カラー」を仲間と共同設立したことだ。同データベースを通じて仕事を得た女性に会った時、感激のあまり泣いてしまったとヒューズは振り返る。
クリント・スミス(29)も、人種にまつわる偏見に挑む書き手だ。「ニューヨーカー」「アトランティック」「ニュー・リパブリック」などで執筆するスミスは、2014年に詩の朗読競技会「ポエトリー・スラム」の全米大会で優勝。昨年上梓した詩集「Counting Descent」(原題)は2017年、全米図書館協会黒人幹部会が選ぶ最優秀詩集に輝いた。同書はまた、全米黒人地位向上協会のイメージ賞の候補にもなっている。
現在、ハーバード大学の教育学の博士課程に在籍するスミスは、「現代の深刻な人種・社会不平等がどのように生まれたのかを理解するために、さまざまな媒体やジャンルを使って人々の歴史認識を複雑化したい」と語る。
一方、ジェイコブ・トバイア(26)はジェンダー・ノンコンフォーミング(既存の性別の枠組みに当てはまらない、または流動的な人)である自身の経験を語ることで、ジェンダーの偏見に挑戦する。これまで「タイム」や「ガーディアン」に寄稿したエッセイや、発売予定の手記「Sissy」は、トバイアの親世代や祖父母世代にとって、ジェンダーにまつわる誤解を解く手助けとなるだろう。
メディアの多様性を牽引するのは作家だけではない。彼らの声を読者や視聴者に届けるプラットフォームは不可欠だ。シリア系アメリカ人のライラ・アラワ(26)は、女性が国際問題や人権問題、個人の問題について語り合う場所としてWebサイト「The Tempest」を立ち上げた。2016年の開設からまだ2年も経っていないが、既に米国内外の女性1000人以上が寄稿する。
ベニー・ルオ(29)が2013年に3000ドル(約34万円)をはたいて立ち上げた「NextShark.com」は、世界各地のアジア系の若者を対象としたWebサイトだ。扱う話題は政治からヘイトクライム、エンタテインメントまで幅広い。中国系アメリカ人として育ち、人種差別に根ざしたいじめを何度も受けてきたというルオは、「主要メディアでアジア人の存在感が薄い現状を変えたい」と話す。現在、スタッフ数は13人。月間読者数は約300万を誇る。
ジョン・トレイヴァー(29)は、メディアを運営しているわけではないが、2014年に共同創業した動画の共有・共同編集サービス「Frame.io」が無数のクリエイターの役に立っていることからリスト入りした。ビジネスチャットツール「Slack」の動画版といえる「Frame.io」は、スナップチャット、アップル、ディズニーといった企業も使用しており、3200万ドル(約36億円)を資金調達するなど急成長中だ。