オフィス物件を中心に不動産管理・開発などを手掛けるSLグリーン・リアルティはすでに昨年12月、5番街にある物件についてナイキと15年間の賃貸借契約を結んだことを明らかにしている。
「ナイキタウン」が入居するビルは、トランプ・オーガナイゼーションが所有する商業物件のポートフォリオのうち、テナント一社が占有する面積としては最大(約6040平方メートル)。トランプ・オーガナイゼーションは今後、5番街のトランプタワーに隣接するこのビルへの新たな入居者を探さなければならない。
この物件の価値は現在、フォーブスの推計ではおよそ2億5300万ドル(約284億5800万円)。ただし、アマゾンをはじめとする電子商取引大手が年々業績を伸ばすなか、ニューヨーク中心部の事業用物件は価値の下落が続いている。
マンハッタンの不動産仲介業者、マーカス&ミリチャップの関係者はナイキに代わる新たなテナントについて、「これほどの売り場面積を必要とするのは百貨店くらいだろう」と述べている。
さらに、「ハロッズならその可能性はあるかもしれないが、店舗を拡大したい百貨店があるとは思えない。(トランプに関わろうとする)外国の組織はいずれも、トランプと結託しているのではないか、トランプのばかげた陰謀論と何か関わっているのではないかなどと言われ、何かおかしな組織のように見られるだろう」と話している。
米国内の小売業者がニューヨークでの出店先として、このビルを選ぼうと考える可能性も高くはないだろう。昨年の大統領選でトランプを支持したのは、地元有権者の10%だった。トランプタワーに入居する米宝飾品大手ティファニーは、選挙後に(抗議活動などで)交通の混乱が続いたことを受け、昨年のホリデーシーズンの売上高を前年比で14%減らしている。隣のビルがトランプタワーであることは、ナイキタウンにも複雑な状況をもたらしている。
ただ、それでもこのビルがあるのは、ニューヨークの商業地区の中心、世界中から観光客が集まる場所だ。トランプタワーには複数のオフィスや店舗が入居しており、その中でも最大のテナントは、高級ブランドのグッチとなっている。同社が2012年に米証券取引委員会(SEC)に提出した書類によれば、テナント契約は2026年までだ。
ナイキの移転について、フォーブスはトランプ・オーガナイゼーションの広報担当者にコメントを求めたが、今のところ返答は得られていない。
移転は「政治とは無関係」
ナイキとSLグリーンの契約締結が明らかになって以降、トランプタワーから離れようとの決断の背景には、国を分断するトランプの政治的発言が少なからず影響を及ぼしているのではないかとの憶測が流れている。
だが、これについてナイキの広報担当者は、移転計画は「何年も前からあった」と述べるにとどまり、政治的な影響があったのかどうかについては言及を避けている。
ナイキは2018年3月に現在のナイキタウンを閉鎖する計画。新店舗のオープンはそれから1年近く先のことになるが、ニューヨークにはそのほか、ソーホーとフラットアイアン地区にも店舗がある。