シャネルやフェンディが入居する百貨店内で処方薬を購入したり、遺伝子検査を受けたりするとは、不思議な感じがするものだ。だが、これがハロッズの掲げる体験を提供するというテーマに合致するものであり、顧客に個別の商品ではなく「ライフスタイル全般」の購入が可能だと周知させることを狙ったものであることは間違いない。明らかに、利益の底上げにつながるものだ。
基本的にハロッズは、世界中の富裕層が数々の商品を購入し、まとめて支払いをすることができるワンストップショップを目指している。これは、ハロッズの最大の競争相手は「あらゆる高級ブランド」との考えを明らかにしているワードが強調する重要な点だ。
一方、競争相手と名指しされても、グッチやシャネル、ドルチェ&ガッバーナといった高級ブランドは、ハロッズとのパートナーシップに前向きだ。その理由は、老舗としてのハロッズの評判、そして来店する富裕層の旅行客の多さだ。ワードによれば、「ブランド各社はハロッズを世界に向けたショーウィンドウと考えている。そのため、彼らはハロッズに出店しなくてはならない」。
ハロッズの地位は確かに、183年に及ぶその歴史によって支えられてきた。だが、それはその成功の理由のごくわずかな一部にすぎない。粘り強さ、そして常に適応しようとする姿勢を維持することが、いわば受け継いだ「秘密のソース」であることが証明されている。
ハロッズの売上高は昨年、20億ポンド(約3000億円)に上った。これを実現した大きな要因は、「英国らしさ」を前面に打ち出してきたことであり、外国人富裕層とのエンゲージメントの強化に力を入れてきたことでもある。