対照的に、隣国・韓国では若者の就職難が慢性化して久しい。韓国統計庁が今年11月15日に発表した「10月雇用統計」では、青年失業率(15~29歳)が8.6%を記録。これは、10月基準としては1999年以来18年ぶりとなる最悪の数字だという。
国政スキャンダルで失脚した朴槿恵政権に替わり、新たに発足した文在寅政権は「イルチャリ政権」として国民の支持を取り付けてきた。「イルチャリ」とは日本語で「職場」や「働き口」の意。つまり、新政権にはまずなにより、失業問題の解消や、新たな雇用の受け皿の拡充という課題解決が期待されてきた。が、フタを開けてみるとさらに悪化した数字がそこにある。韓国メディア記者のひとりは言う。
「韓国では財閥・大企業など上位数社が社会の富をほぼ独占しているので、力のある中小企業が育ちにくい。結果、学生や若い人材は限られた“優良なパイ”にしがみつくため、過酷な競争を強いられることになるのです。これは構造的な問題ですし、政権が変わったところでただちに是正されるものでもないでしょう。むしろ、財閥・大企業と繋がりの薄い野党候補が当選したことにより、政権が経済の手綱を握れなくなっているという見方もできます」
一方、韓国大学の教育関係者からは、次のような指摘がある。
「学生や親にしても、大企業や公務員以外は“自慢できない”、もしくは“恥”という考え方が蔓延してしまっている。狙った企業に入るため、留年や海外留学を繰り返したり、能力磨きや資格取得に熱中するあまり、不毛なモラトリアム期間を過ごす若者も少なくありません。失業問題は、経済構造の問題であると同時に、韓国国民が持つ働き方に対する意識の問題でもあります」
財閥・大企業中心の経済構造を解消するためには、優良な人材が中小企業に集まる必要がある。そして中小企業が成長すれば、ゆくゆく失業問題も解決されるのではないか。韓国社会では、そのようなテーゼが専門家を中心に長らく語られてきた。
最近では、ドイツなど中小企業が強いとされる国の経済構造をキャッチアップし、また「Hidden champion(隠れた企業=世界で力を持つ中小企業)」を育てようという動きが盛んになりつつある。そして、現状ではまだ不利な状況にある中小企業と人材のマッチングを実現していくために、人工知能(AI)への期待が高まりを見せつつある。