背景には、2022年に開催が決まった北京冬季五輪がある。中国でレジャーとしてのスキーが始まったのは2000年代以降。政府は五輪の年までに中国でのウィンタースポーツ(スキー、スノーボード、スケートなど)の愛好者や関連イベントの参加者、業界関係者などを含む人口を3億人にすると言い出している。これまでのように少数エリート育成でメダルを量産するのではなく、スポーツ人口の裾野を広げることの重要性に気づいているからだ。
「中国スキー産業白書(中国滑雪产业白皮书)」によると、昨シーズンにゲレンデへ足を運んだ国内客は延べ約1500万人(前年比20%増)に達し、全国で646のスキー施設(前年比13.7%増)があるという。愛好者は200万人といわれる。人口規模からいえば、まだ特別な人たちのレジャーであることには違いないが、五輪会場となる河北省張家口市周辺を中心に莫大な投資が行われ、続々と新しいスキーリゾートが開発されている。
子供連れのファミリーが多く、ゲレンデはおしゃべり声でにぎやかだ。
2003年に開業した万龍スキー場や、マレーシア資本で12年開業の崇礼密苑雲頂楽園スキー場、さらにはスイスやイタリアなどの海外資本も呼び込む巨大プロジェクトとなった15年開業の崇礼太舞スキー場は有名だ。
寒冷な気候など自然環境に恵まれた東北地方(黒龍江省、吉林省、遼寧省)にもスキー場は多い。投資額は北京にはかなわなくても、白書が伝える国内上位施設のランキングでトップなのが松花湖国際スキー場だ。以下、2位長白山スキーリゾート(吉林省)、3位万龍スキー場、4位崇礼密苑雲頂楽園スキー、5位崇礼太舞スキー場、6位ハルビン亜布力スキー場(黒龍江省)と東北勢も健闘している。
春節も近い今年2月初旬、吉林市郊外にある松花湖国際スキー場を訪ねると、中国各地から訪れたスキーヤーたちが白銀の世界を心ゆくまで楽しんでいた。
若者のグループや小さな子連れのファミリー客も多い。スノーボーダーもかなりいる。ただ全体をみると、日本と比べて初心者が多いこともわかる。圧倒的に密集しているのは、リゾートの目の前の傾斜のゆるいゲレンデだからだ。おそらく日本の1970年代のスキー場がこんな感じだったのではないか。でも、スキーウェアは真新しいブランドもの。中国では、経済的に恵まれた階層の人たちだと思われる。
4人に1人はスノーボーダーか
松花湖国際スキー場が開業したのは2015年1月。吉林市から東南約15kmの山間に生まれた最新スキーリゾートは、世界大会でも使用される競技用の本格的なコースのほか、ビギナーでも山頂から滑走できる多彩なコースなど28本を完備。レンタルスキーやスクールの予約ができるスキーセンター、山頂レストラン、高速ゴンドラや電熱シート装備のリフトなど、世界の最新設備が導入されている。