中国で進む「AI介護」の実用化、ロボットヘルパーの投入も

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中国の親たちは、一人しかいない子どもに老後を頼れないことに気付きつつある。60歳以上の人口は約1億8500万人。そして60歳以上のうち子どもと同居しているのは38%しかいない。子どもをあてにできない以上、高齢者は介護施設に入らざるをえないが、介護施設も人件費の上昇に直面している。コスト問題を解決しながら、中国の高齢化社会の基本ニーズに対応するため、人工知能(AI)を活用したデバイスに注目が集まっている。

高齢者介護の質の面で遅れを取っている中国は、そのギャップをAIで埋めようとしている。先行するのがバイドゥ、アリババ、テンセントのインターネット業界のビッグ3だ。アリババヘルスは診断改善、医療決定の迅速化、病院間の情報共有を目指し、中国の3医療機関と提携。今年7月には、がん細胞を特定するCATスキャンを読み取れるアプリを発表した。

バイドゥは昨年、患者と会話し、よりよい診断を提供するチャットボット「メロディ」を立ち上げた。メロディは患者に質問し、健康情報をオンラインで提供するだけでなく、医師による診断結果も伝える。テンセントが出資するiCarbonXはAIを使ってデータを集め、患者に医療アドバイスを行う。同社は遺伝子情報を用いて、健康上の問題を推測する。

ロボットはAIを活用し、ヘルパーとしての役割も果たす。上海新松機器人自動化有限公司(Siasun Robot and Automation Co, Ltd)は最近、介護ロボットを発表した。ロボットは家庭内の生活をサポートし、コミュニケーションや健康診断を行う。音声認識、自然言語処理、機械学習などのAIを搭載したロボットは、高齢化が進む中国の介護分野で、役割を増すと期待されている。

中国政府の国務院は7月、AI産業の市場規模を2020年に1500億元(約2兆6000億円)、2025年には4000億元(約6兆8000億円)、2030年には1兆元(約17兆円)とする目標を打ち出した。地方政府もAI企業を支援し、蘇州と深センは最先端企業に助成金を出している。

編集=上田裕資

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