なぜIT批評家が、ミレニアル世代の渇望を説くのか

左から、けんすう、落合陽一、尾原和啓、前田裕二

生まれた頃から“ないものがなかった”のがミレ二アル世代だ。『モチベーション革命 稼ぐために働きたくない世代の解体書』の著者、尾原和啓氏は、同書の中でその世代を「乾けない世代」と形容している。

では、乾けない世代とその上の世代にはどんなギャップがあるのか。また、「乾けない世代」観というのは都市と地方で異なるのだろうか。10月初旬に行われた本の出版記念イベントで、「乾けない世代」のメディアアーティストの落合陽一氏、SHOWROOM代表の前田裕二氏、nanapi創業者のけんすうこと古川健介氏、と著者 尾原氏が議論した。[前回の記事はこちら


前田裕二氏(以下、前田):この本の二人称って、ミレニアル世代ですよね。若い世代の生態を、尾原さん世代に向けて解説する本かと思いきや、「乾けない世代(=ミレ二アル世代)」がモチベーションを持つためにはという激励の要素も入っている。誰に一番読んでほしかったのかというのを聞きたいです。

尾原和啓氏(以下、尾原):一番というとやはり、世代観の境と言われる36歳より下の「乾けない世代」本人たちです。

先日久しぶりに漫画『課長島耕作』を読んでみたら、34歳の島は、次に課長に昇進するのは誰かを非常に気にしているのです。ベンチャー企業の方や、リスクをとって独立したような方は例外ですが、35歳前後は一般的に課長ど真ん中。まさに島の世代です。

直属の上司である部長は「“ないもの”があった世代」。つまり、「達成」や「快楽」の比重が高く、目標を達成したらヨットだ!ワインだ!となりがち。一方で下をみると、若手と価値観が一致しないことは明らか。そんな、世代観の歪みで疲弊している人たちを救い上げたかったのです。

前田:世代間ギャップを取り除きたい。面白いですね。

尾原:それに、上の世代は上の世代で尊いことも伝えたい。戦争のとき、日本人が我慢強かったせいで日本は焼け野原になった。でも、そのゼロの状態からこれほど急速に回復した国は他にないのです。「ない」を「ある」状態にする目的が決まった瞬間、団結して一心不乱に走ることができた。これは日本人の誇るべき気質だと思います。でもそれゆえに、今の時代用の新しいシステムに移りにくくなっています。

そんな上の世代に、乾けない世代の彼らなりの渇望を知って、歩み寄ってほしい。そのためのHow toになっていればいいなと思います。

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前田:尾原さんのバックグラウンドや専門からいうと、もっとIT進化が世の中にもたらす影響など、テクノロジーの議論に寄せる切り口もあり得たと思います。今回はなぜあえて「モチベーション」という人間の内面的なところにフォーカスを当てることになったのでしょうか。

尾原:前田さんの仰るように、僕が人生を通して伝えたいことは「テクノロジーによって人はもっと豊かに自分らしく生きられる」ということです。これまでに出版した2冊はIT関連でした。

ただ、一つ問題がありました。僕の本は、流れる時間のスピードが速い六本木や恵比寿界隈の方には非常に好まれるのです。それが、有楽町や霞が関に行くと、10位に入るくらいのぼちぼち売れているレベルになる。そして、大宮あたりまで行くと、書店で探し回ってようやく1冊あるといった具合です。

これを、NewsPicksの佐々木編集長は東京の東海岸・西海岸と呼んでいますが、僕が本当に届けたいのは、西ではなく東。西海岸の人たちは自分たちでできるから。そして、東海岸すら越えて、大宮やもっと地方の方々にメッセージを届けたいと思ったときに、「テクノロジーから入ってはダメだ」と思いました。
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構成=ニシブ マリエ

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