発明家で未来学者、レイ・カーツワイルは、同著推薦の辞として「医療、製薬の分野は、情報テクノロジーの領域となりつつあり、故に、かつてない早さで進化している。医師たちの多くは、現在臨床の最先端にある新しい治療法のすべてを知らない。その結果、患者自身がその進化を知り、追跡し、自らの健康に責任を持つことは今後ますます重要になる」と寄せている。
現代の医療イノベーションの恩恵を受けるために、患者は何を知り、どう行動すれば良いのか。彼女自身の「プロの患者」としての経験とともに、話を聞いた。
「テクノロジーの集合」が今、医療界で起こっています。嵐のような劇的な技術の進化は、「患者」の時代の到来を意味しています。「患者」中心のケアというだけでなく、「患者」自身が采配する医療の時代です。
私は、シリアルアントレプレナーとして10以上の初期ステージの医療、バイオ系のスタートアップに関わってきました。また、シンギュラリティ大学で戦略関係のバイスプレジデントを務め、急速に進化、統合するテクノロジーの中で競争力を保つための講義を行ってきました。
2015年に上梓した著書で私が言いたかったことは、「テクノロジーは希望だ」ということです。どんな病気も治せる日が来る、患者はそれを信じて待つべきです。慢性病を治療しながら暮らしている人も、たとえ完治しなくても、患者としての生活は技術革新でだんだん楽になる。それを知ってほしい。イノベーションの恩恵を積極的に取り入れて、患者としての生活を豊かにしてほしいと思っています。
10代で43回の入退院、6回の手術
私自身、クローン病(編集部注・全消化管に炎症性の潰瘍などが起こる難病)を抱えています。16歳の時に自己免疫性疾患と誤診されて、43回入退院を繰り返し、6回も手術を受け、1つならず臓器を摘出されました。
10代ながらも、セカンド・オピニオンどころか、10人近くの医師を訪れ、意見を聞きました。しかし、誰も「ロビン、手術は少し待とう。君は若いし、新しい治療技術が出てくるかもしれない」とは言ってくれませんでした。「テクノロジーは希望だよ」とも。
しかし実際、その当時腹腔鏡手術の技術は既に発明されていました。新しすぎて、まだ広まっていませんでしたが。もし私があと数年手術を待っていたら、腹腔鏡の技術で5回の手術が1回に減っていたかもしれないし、切開がインチ単位ではなく、ミリ単位で済んでいたかもしれません。リスク、回復、私の人生にとっても大きな違いです。
手術を繰り返しても治らず、激しい痛みに悩まされ、26歳の時に強力な鎮痛剤を一生服用し続けなければならないと宣告されました。そこで私は、ついに「キレた」のです。
「体重38kgの私が毎日80mgのオピオイド? それも一生? 冗談じゃない!」と。そこで、それまでのメディカルチーム全員を「クビ」にしました。「これからは私が、CEOになる!」と固く決心をして。だから私も患者、「プロフェッショナルな患者」です。
チームをクビにしてからはまず、徹底的に勉強しました。それから医師も病院も保険会社も慎重に選んで、新しいメディカルチームをつくり、そのチームと相談して2週間すべての治療と服薬をやめました。その後で抗TNFレミケードの点滴を受けたら、嘘のように痛みが消えました。あの日のことは忘れません。