スペースシャトル計画に参加した宇宙飛行士の多くが、宇宙空間で頭痛を経験していた。その割合はスペースシャトルの短期ミッションを行った男性宇宙飛行士の69%、女性宇宙飛行士の55%に達していた。
2000年に始動した国際宇宙ステーション(ISS)の長期宇宙滞在プログラムにおいても、約70%の宇宙飛行士が頭痛を報告している。
短期ミッションにおいての頭痛は、無重力状態が引き起こす“宇宙酔い”が原因だとみられている。人体が宇宙空間に適応するためには時間が必要だ。宇宙空間には頭痛やその他の身体的変化を引き起こす様々な要因が存在する。
地球上では重力によって体内の液体は体の下部に押しやられているが、無重力状態では液体は体全体に、均等な圧力を受けながら広がる。つまり、宇宙飛行士の頭部では地上にいる場合よりも多くの血液等の液体が循環することになる。これが頭の一部で圧力の上昇や血流の集中を生み、頭痛の原因となる。
また、圧力の変化で眼球が歪むことにより視覚も影響を受け、それが頭痛の原因となることもある。さらに、宇宙空間では“喉の渇き”を感じにくくなることも知られている。宇宙飛行士らは喉が渇いていなくても水分を摂取するように指導されるが、摂取を怠る場合も多い。脱水症状が頭痛の原因となる場合もある。
さらに、宇宙船内の大気は地球上に比べて二酸化炭素の濃度が高い。二酸化炭素が原因で頭痛が起きる場合もある。また、宇宙船内では空気の循環を促すために大量の電動送風機が稼働しており、騒音が頭痛の原因となるケースもある。
また、ストレスが頭痛の原因になる場合もある。莫大な金額が費やされたプロジェクトで重要な任務を果たすことは、人間に多大なストレスを与える。宇宙飛行士らは6ヶ月もの間、家族と離れて過ごすこともあり、これも心理面で大きなストレスになっている。