2011年の1月に公開されたiTrumpはトランペットの音色を奏でる音楽アプリで、簡単なゲーム機能も内蔵されている。シャーフェルドはiTrumpの商標権を米国特許商標庁(USPTO)から取得し、自身が立ち上げた「Spoonjack LLC」という会社からリリースしていた。
iTrumpという名称で、後に米国大統領となる人物から訴えられるとは、シャーフェルドは夢にも思わなかった。。しかし、公開直後に彼はトランプの弁護士から公開中止を求める書簡を受け取った。
「貴社のアプリはトランプ氏の商標権を侵害している。トランプ氏は既に自身の名を冠したアプリをリリースしており、iTRUMPの商標の使用は消費者に誤解を与え、トランプ氏が長年築きあげた名声を傷つけるものだ」と弁護士のJames D. Weinbergerは述べていた。
iTrumpはリリース直後からUSAトゥデイ等のメディアでとりあげられ、アップルのアプリストアでも注目のアプリに選ばれていた。
「彼らは私のビジネスを潰そうと企んだんだ。簡単にそれをやってのけられると思ったのだろう。でも、法律は自分の味方だと私は思っていた」と、シャーフェルドは当時を振り返る。「全くバカげた話なんだ。奴らは物事を大げさに捉えているだけだと思っていた」
しかし、これはその後6年にわたる法廷闘争の幕開けだった。トランプ側は弁護団を結成し、数千ページに及ぶ裁判資料を提出した。しかし、この込み入った争いは今年の8月になってようやく終結を迎えた。
トランプ側は「自主的に撤退」と説明
8月11日、米国の商標審査審判部はトランプ・オーガナイゼーションに対し、エンターテインメント領域における「Trump」の名称の独占的使用権を無効とする決定を下した。シャーフェルドは一人の弁護士も雇わずにこの戦いに勝利した。彼は地元の図書館にこもって法律書を読み漁り、無料の法律相談にも出かけて知識を身につけた。
フォーブスの取材に対し、トランプ・オーガナイゼーションの法律顧問のAlan Gartenは「我々は負けたのではない。自主的に撤退したのだ」と回答した。「シャーフェルのアプリは楽器の演奏方法教えるアプリであり、これは我々のビジネスとは何の関わりもない。彼のビジネスがうまくいくことを祈る」とGartenは続けた
法廷闘争に勝利したシャーフェルは今後もサンフランシスコを拠点にアプリ開発を続け、iTrumpのアンドロイド版を間もなく公開する予定だ。しかし、彼は依然としてトランプに対する警戒心を解いてはいない。
「また同じ訴えが起こされる可能性はある。安心はできない」とシャーフェルは言う。iTrumpは現在4.49ドルの有料アプリとしてiOSのアップストアで公開中だ。