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「第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント」の第一人者。

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今回は、不動産市場とインフレとの関係を考えてみよう。

景気回復に伴うインフレによって日本経済が本格回復した場合の不動産市場は比較的想像しやすい。まず東京都心のAクラスのオフィス賃料が上昇したり、期待利回りが低下したりすることで価格が上昇する。

それを受けて、価格上昇の波は都心マンションなどに波及していく。全国すべての不動産価格へまんべんなく波及することは到底期待できないが、都心3区(中央、千代田、港)、5区(中央、千代田、港、新宿、渋谷)、23区から神奈川、埼玉、千葉へとゆるやかに価格上昇の波は続く。名古屋、大阪、福岡をはじめ、他都市もタイムラグを伴って東京に続くだろう。

では、景気回復を伴わないインフレの場合はどうだろうか。

金の国際相場はドル相場と逆に動く傾向があるため、バブル期の円建て金価格はインフレ率に比例して上昇することはなかった。リーマン・ショック直後には、突発的な事態に備える投資家が、実物資産である金を保有する動きをみせた。しかし、2000年代前半には1g1000円台だった金価格は、13年4月に5084円の高値をつけたあと、現在は4900円台で推移している(17年8月15日時点、田中貴金属の税込小売価格)。

不動産も実物資産の一つだ。一般論として、デフレ時には現金が強く、インフレ時には金や不動産など実物資産の価値が高まる。マネーという、それ自体は価値のない金融資産の信認が落ち、また各種要因から資源価格や食料の価格が上昇する状況下では、実物資産である不動産価格も相対的に上昇するとされる。しかし現在の日本において、価格上昇する不動産は限定的で、経済成長を伴わないインフレ下では、原則、不動産は下落するはずだ。理由は以下のとおり。

資源インフレやそれに伴う物価高は、不動産市場では修繕費などのコスト上昇につながるうえ、入居者の生活コストが上昇することなどにより、家賃に下落圧力をもたらす。

給与所得者の生活は苦しくなり、消費は減り、企業業績は悪化し、賃貸物件の賃料にも売買物件の価格にも下落圧力が働く。こうなると収益物件もマイホームにおいても、賃料収入の減少や所得の低下によるローン破綻が懸念されよう。

さらに、景気停滞が金利上昇を伴う場合、それはストレートに不動産価格の下落圧力となる。同じ支払額で払えるローン額が減少し、収益物件・マイホームともに、取得者の購入能力が低下するからだ。

変動金利でローンを借りている個人や収益物件のオーナーの破綻懸念も強まる。1997年のアジア通貨危機時の韓国では、ウォン安、金利上昇といった深刻な景気悪化によって、不動産を手放す人が急増。物件は余剰となり、不動産価格は大幅に下落した。

良いインフレになるのか、悪いインフレになるのか。日銀黒田総裁の任期は来年4月8日まで。留任であれ交代であれ、大きな政策変更はないものと思われるが、政策動向や金利動向は注視しておきたい。

住宅ローン金利についてはいくつかのネット専業銀行が変動金利を0.444%など、過去最低水準を更新する動きが相次いでいる。住宅ローン控除によって借入残高の1%が戻るため、実は、住宅ローンについては以前から、実質的にマイナス金利の状態だったといえる。

長期金利は日銀の誘導目標水準であるゼロ%近傍に押さえ付けられた状態のままだが、アメリカは金利上げ、バランスシート縮小の方向だ。状況によっては日銀の政策に方針転換に可能性もあるだろう。そうなると住宅ローン金利にも当然影響が出よう。

文=長嶋 修

 

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