マーケティングからデザインまで、ファッションに浸透するAI

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大手アパレルのなかには独自の販売予測システムを開発している企業もあるが、予測のルールを変更するとなるとプログラムを組み直すなどの膨大な手間がかかる。人工知能であれば、新しいデータをどう生かせば高精度に予測ができるかを自動で考えてくれるメリットがあるわけだ。人工知能が売り時を判断し、販売管理を担う日が近づいているといえるだろう。

マーケティングからデザインまでファッションに浸透

海外ではさらにファッション業界に人工知能が深く浸透している。ランジェリーブランド「Cosabella(コサベラ)」は、広告会社との契約を解消して、人工知能を用いたマーケティングを行っているという。Algorithms社が開発した「Albert」というAIプラットフォームに、検索連動広告とソーシャルメディア・マーケティングの管理を任せ、デジタルマーケティングを自律的に行っている。その結果、新規ユーザー数30%増、購買件数1500件増という大きな成果が生まれた。

特に大きな成果は、ソーシャルメディアからの収益増だ。コサベラのマーケティングディレクターは、「Albert導入前は、ソーシャルメディアからの売り上げは全体の5~10%に過ぎませんでしたが、今や常時30%。Albertはフェイスブックでのコンバージョン率を見事に向上させ、フェイスブック経由での商品購入は2000%も増えました」と話している(Campaignjapan 2017年3月29日付)。

これまでファッションの領域において、人工知能が最も関与しづらい分野とされてきたデザインに関しても、さまざまな取り組みが行われている。ドイツの大手アパレルEC企業ザランドと米グーグルによる実験的プロジェクト「Project Muze」はその典型例といえる。

グーグルの機械学習システム「Tensor Flow」をベースに、トレンドや600人以上のファッションエキスパートの好みから抽出したデータによって、新たなデザインエンジンを開発したのだ。「Project Muze」では、ユーザーが性別や好みのテイストなどについての質問に答えると、それが形となって立ち現れるという。人工知能が洋服をデザインする未来も、案外近くに迫っているのかもしれない。

実際に、新技術の導入や活用に積極的な中国では、“人工知能デザイナー”がファッションショーを行ったという報道もある。広告マーケティングや在庫管理などはもちろん、コーディネートやデザインといった領域まで影響を及ぼしている人工知能。ファッション業界にもたらす恩恵と衝撃は、少なくないようだ。

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文=呉承鎬

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