アリババの流通総額は2015年に4850億ドル(約55兆円)だった。マーは先日、2020年を目標に「アリババの流通総額(GMV)を1兆ドル(約113兆円)にまで伸ばし、アメリカ、中国、ヨーロッパ、日本に次ぐ世界第5位の経済プラットフォームに成長させる」と述べた。さらに、2036年に世界20億人の消費者へのサービス提供を目指すと宣言した。
6月中旬、マーは米デトロイトを訪れ、3000名以上のスモールビジネスオーナーらを前に、彼の考えを述べた。
マーによるとアリババは米国でアマゾンに対抗する意思はなく、米国企業が中国人消費者にアクセスする窓口になることを目指すと説明した。そのために、物流やマーケティング、決済の手段を提供していくという。
「我々はアマゾンのビジネスモデルとは全く異なる」とアリババ社長のMichael Evansはフォーブスの取材に述べた。「我々はEコマースのインフラを構築し、小規模企業がテクノロジーの力でグローバルに向けて活動する機会を与える。アリババの事業規模はアマゾンよりはるかに大きなものになる」
この計画は今年はじめにジャック・マーが米国のドナルド・トランプ大統領と結んだ約束の実行を後押しする。マーは今後5年間で100万人の売り手がアリババのプラットフォームに参加することにより、同じ数の米国人の雇用が生まれると説明した。これはアリババに参加した売り手が、増加する業務に対応するためそれぞれ1名を雇用するという想定に立った数値だ。
アリペイも米国進出、数百万店舗で利用可能に
アリババはこれまで世界各地で地元企業を買収し、覇権を広げてきた。インドを本拠とするPaytmやSnapdealのほか、先日はシンガポールのLazadaに10億ドルを追加出資し、持ち株比率を83%にまで上昇させた。
また、傘下のアントフィナンシャルはタイや、韓国、フィリピンに出資し、南アフリカへの拡大戦略も描いている。
しかし、活発な投資がアリババのグローバル化を生むためにはいくつかの課題もある。一つ目にあげられるのが傘下のEコマースプラットフォーム、タオバオへのコピー商品の出品問題だ。米国通商代表部(USTR)は昨年、タオバオに大量のコピー商品が出品されていることを糾弾した。
デトロイトでマーは「偽造品はアリババのガンであり、その撲滅に向けては当局とも協力し、ビッグデータの解析テクノロジー等も導入して対策に取り組んでいる」と述べた。
しかし、アリババ運営のTモールでは対策が強化されたものの、タオバオでは依然、コピー商品の出品が続いているとの指摘が米国のコスメブランドからもあがっている。
シリコンバレー本拠のコスメ業者「100% PURE」は「中国の小売業者は米国で、卸値で製品を入手し、タオバオ上で不当に安い価格で販売している」と指摘する。
また、一部のアナリストからはマーが、米国のスモールビジネスの将来に対して楽観的すぎるのではないかとの指摘もあがる。中国人消費者の消費意欲が高まっているのは事実だが、アリババのプラットフォーム上での競争は熾烈を極めている。