「bioRxiv」は、生物学の研究者らが「ネイチャー」や「サイエンス」といった論文審査のある科学誌に投稿する前に、作成した論文を共有できるようにしたもの。CZIの科学分野の活動を率いる神経科学者のコリ・バーグマン博士はブログへの投稿で、今回の出資によって「新たな発見のスピードが劇的に加速され、健康や病気に関する理解も同様に加速することになる可能性がある」と述べている。
一方、ザッカーバーグはフェイスブックへの投稿で、「今の子どもたちの生涯のうちに全ての病気を治そうとするなら、・・・速度を上げなくてはならない」と述べ、科学誌で研究結果を発表するまでに1年またはそれ以上かかることには問題があるとの考え方を示した。
物理学の研究者らが作った「arXiv(アーカイブ)」をモデルにした「bioRxiv」は、ロングアイランドにある1890年創設の非営利団体、コールド・スプリング・ハーバー研究所が2013年から運用。生物科学に関する研究の中心的な役割を果たしてきた。
科学者たちは従来、自身の発見を発表し、そして科学誌に投稿してきた。掲載までには査読と呼ばれる論文審査のプロセスがあり、発表者以外の研究者ら(通常は匿名)による厳しい審査が行われた後でなければ、公開はされない仕組みになっている。だが、査読には数か月から数年がかかる。急速に研究が進められているヒト遺伝子などの分野では、従来のやり方では時間がかかりすぎるとも指摘されてきた。
カリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ダウドナ教授は、ゲノム編集技術CRISPR(クリスパー)に関連した研究のように急速に変化が起きる分野では、「bioRxiv」は特に重要だと述べている。
また、同校の生物学者であるマイケル・アイゼンは、「これでようやく生体臨床医学における論文出版の中心が、査読制度のあるジャーナルではなくなる」「20年前に起きているべきことだったが、それでも科学論文の出版の歴史における重要な瞬間だ」と話している。