現代の世界的変革者30人が発した「凄い言葉」を、3回にわたって紐解いていく。
1) ジェフ・ベゾス/アマゾン・ドット・コム
──「世界が変わると信じていれば、自分がその一端を担えると信じるのはごく自然なことだ」
[解説]「世の中が大胆に変わるイメージを持つこと」が、世界を変えるビジネスへの第一歩だ。そう考えるベゾスは、変化への想像力を養ってくれる「発明の体験」を重要視している。
読書家であると共に、無類の発明好きの少年だったベゾス。掃除機の改造や部屋に自作の警報機を仕掛けるなど、電子機器の製作に夢中だったという。その過程でベゾスは、身の回りの世界が、少しずつではあっても、確かに変わっていくことを経験していたのだ。
「発明の体験」はアマゾンの採用哲学でもある。「あなたが発明したものについて教えてくれないか」は、採用面接でベゾスが尋ねる決まり文句。発明といっても、それは「ちょっとした新機能」で構わない。新しいことに挑戦する人間かどうかを知りたいのだ。
世界のルールを塗り替えるイノベーションを起こし続けるアマゾン。その源泉には、発明体験に裏打ちされた、変化への豊かな想像力があった。
──「『講釈の誤り』には、どう対処するつもりなのですか」
[解説] ベゾスの伝記の著者ブラッド・ストーンに、ベゾスが投げかけた質問の言葉だ。「講釈の誤り」とは、ナシーム・ニコラス・タレブが著書『ブラック・スワン』で論じた概念。タレブは、黒い白鳥が発見されるまで人類は「すべての白鳥は白い」と信じていたことを例に、「異常事態の発生はなかなか予想できないが、一度起きると、まるで必然かのように講釈をこしらえる」という人間の性質を指摘。
ベゾスは、アマゾンが世界に普及させた数々の革新的なサービスが、ビジョンやアイデアによって必然的に誕生したように思えるのは、後知恵による「講釈の誤り」であると考えていた。
「社内でアイデアが育まれるプロセスは、意外にぐちゃぐちゃなもの。頭に電球が灯る瞬間などありません」
どんなにクールなサービスも、出発点には、混沌の中での試行錯誤がある。保証された成功などもないというのが、ベゾス流の経営哲学だ。
2) ラウール・バティア/INDIGO
──「顧客を失わずに、他にどんなコストを削減できるか。これこそが、私たちの“宗教”です」
[解説] 2006年に設立したインドの格安航空会社(LCC)、インディゴは、わずか10年足らずで43カ所の空港を126機で結ぶインドを代表する航空会社へと成長した。彼らを導いたのは、まさにLCCらしいたった一つの“教義”にあった。