フォーブスの調査によると、ジャレッド・クシュナーと両親、弟のジョシュが保有する資産総額は推定18億ドル(約1990億円)。その半分以上は、所有する不動産の価値だ。ジャレッドは義父と同様、主に不動産投資によってその富を築いてきた。
不動産以外でクシュナー家が保有する資産は、ジャレッドが2006年に買収した週刊紙「ニューヨーク・オブザーバー」(現在はニュースサイト)、ジョシュが共同で創業した医療保険のスタートアップ「オスカー・ヘルス」(企業価値は推定27億ドル)の株式などが含まれる。
クシュナー家の成功の物語は、米国に移住したその他の数多くの勤勉な家族たちと同様に始まった。ジャレッドの祖父母、ジョセフとレイはホロコーストと強制収容所での暮らしを生き残り、戦後にベラルーシから米国に移り住んだ。
ニュージャージー州エリザベスで育ったジャレッドの父チャールズは、最初は大工として、その後は建築業者として働いたジョセフの仕事場である建築現場をよく訪れていた。チャールズは不動産に関心を持ったが、自らの仕事に選んだのは、建築することではなく建物を所有することだった。
法科大学院を卒業後、しばらく父の仕事を手伝ったチャールズは1985年、不動産会社「クシュナー・カンパニーズ」を設立。それからおよそ20年、数々のアパートを購入した。最も多かった2004年には、米北東部に合わせて2万5000棟ほどを所有していた。
だが、チャールズはその年、脱税と違法な政治献金、証人を買収した罪で有罪判決を受け、クシュナー・カンパニーズは社外から最高経営責任者(CEO)を招くこととなった。チャールズが刑期を終えたのは、その2年後。不動産市場が活況を呈していたころだった。父が築いた同社のCEOにジャレッドが就任したのは、それよりさらに後のことだ。
一方、家業には関わらなかった弟のジョシュは、2012年にミレニアル世代を主なターゲット層とする医療保険会社「オスカー・ヘルス」を共同で創業。同社は2016年2月の資金調達ラウンドで、企業価値27億ドルとの評価を受けている。同社には投資家のビノッド・コースラ、ジム・ブライヤーなどが投資している。
そのほかジャレッドとジョシュは2014年、ともに不動産取引仲介サイト「カドレイ(Cadre)」を立ち上げた。同社はゴールドマンサックスや中国の電子商取引大手アリババ創業者の富豪ジャック・マー、著名投資家ジョージ・ソロスが率いる投資会社などから5000万ドルの調達に成功している。