少なくとも2015年には開発が始められていたこのジャケットは、価格が350ドル(約4万円)。予算の範囲内だと考える人たちにとっては、魅力的な商品だろう。洗濯機で洗うこともできる。だが、それでも筆者の考えは変わらない。理由は次のとおりだ。
自分で洗えるというだけでなく、自転車に乗っていても、寒い日に歩いても問題がない程度の保温性があれば、もっと便利なものになったのではないだろうか?また、長距離でも移動中にずっと音楽を聴くことができるなどの機能は、すでにその他の多数のデバイスによって、可能になっている。
長く待ち望まれた割にそれほど「クール」ではなかったグーグルグラスと同じように、数多くの便利な機能を期待して、多くの人が毎日必ず着るようなものにはなりそうにない。機能を動作させるためには、ブルートゥース接続型のカフリンクを充電する必要もある。
安全性に関する懸念もある。自転車での通勤途中に音楽やニュースを聞いていて、後ろから来る救急車を無視したり、歩道からあなたを大声で呼んでいる人に気付かなかったりすることはないだろうか?
ニューヨークでは、今でも年間少なくとも数百人が自転車での走行中に事故に遭い、命を落としている。重要なことはそうした事故の犠牲者をなくすことであり、危険を増すことではないはずだ。
また、衣類は着続ければ劣化する。雨が降り始めたとき、生地に開いた小さな穴がジャケットを「ショートさせる」可能性はないのだろうか?高級ブランドは昔から、商品を長く使ってもらうために修理を受け付けている。だが、グーグルにはそのサービスもないようだ。
ただ、そうは言ってもジャケットを完成させた技術は拡張性があり、確かに興味深いものだ。最終的には、多くの企業に利用可能なものになってくれればいいと思う。
ジャケットについて筆者が最も納得のいかない点は恐らく、テクノロジー企業各社が携帯端末をハイテク機器とつなぐことばかりに固執しているように見えることだ。アップルウォッチの失敗の理由は、すでにスマートフォンで利用可能な機能しか提供しないガジェットであり、そこに価値を見出せる消費者が多くなかったことだ。
「スマートな」製品の全てが携帯電話につながっていなければならないなら、それらの製品は携帯電話の一部に過ぎず、利用者に新たな利点をもたらす、真に有用なものにはならないのではないだろうか。