一方で、10年という単位で考えてみると、市場の変動要素よりはAという会社の価値が上昇するかどうか、という点のほうが決定的だ。すなわち、日経平均指数や東証株価指数などの影響よりも個別企業の業績の影響力が高い。ということは、より顧客の支持があり、売り上げや利益を上げる会社を探すことの方が重要になる。
株価は1株当たり利益と株価収益率の掛け算であらわすことができる。
株価=1株当たり利益(EPS)×株価収益率(PER)
市場の影響はPERに反映されるが、業績はEPSで表現される。PERはだいたい10〜30という数字内に8〜9割くらいの企業が収まっている。そして、単位は倍という言い方をするので、10〜30倍という数字になる。たとえばEPSが100円であれば、株価は100×10の1000円から100×30の3000円の範囲に収まることが多い。
仮にEPSが100円で、年率15%程度で成長をしたら、10年間ではEPSは400円になる。もし、その際もPERが10〜30倍の間で評価をされているならば、株価は4000〜1万2000円の間に収まるはずだ。
これをみると、10年前に3000円と割高で投資をしたとしても、10年後にPER10倍程度と低い評価であっても業績が大きく変化をしているので、4000円という価格になり、10年間で33%のリターンをあげられる。逆に1000円で投資をした場合、1万2000円で売却できれば12倍のリターンを享受できる。
ここで大事なのはEPSの成長力だ。あくまで、年率15%程度業績を伸ばす会社を見つけることができた場合、そのようなリターンが予想されるということであり、実際には年率15%伸びる会社を見つけることは容易ではない。とはいえ、移り気な市場動向を予測するよりは、伸びる会社を見つけることの方がはるかに簡単だ。
長期投資が非常によい投資であるのは、長期運用そのものがリターンを保証するからではなく、長期の時間軸で投資をすれば、企業業績の伸びと投資のリターンが比例してくるからだ。それは、長期にわたって成長し、信頼できる会社を見つけて投資できるかにかかってくる。
では、長期的に成長できる会社に投資をするために重要な視点は何だろうか。
それは、起業家や経営者が長期的な目線で経営にコミットしていること。そのためには経営における時間軸が2〜4年程度ではなく、10年程度の射程距離が必要だ。日本の企業のサラリーマン化が進み、10年以上経営を続けるのはオーナー経営者がほとんどである。だから、必然的に長期的な視点ではオーナー経営者への投資比率が高くなることになる。私が運用をしている「ひふみ投信」でオーナー経営者の比率が高いのにはそのような背景がある。
2017年になったと思ったら、もう12分の2が過ぎた。今年をどう過ごすか考えているうちに、あっという間に1年が経ってしまう。1日1日を大切に過ごすことと、10年、100年という長期的な目線で生きることを同時にしたいと筆者は考えている。さあ、今年も残り10か月。この時間を大切に過ごそう。