ビジネス

2017.01.21

僕がチョコレートの国際コンクールに挑む理由/小山 進

小山 進(写真=岩沢蘭)

僕は京都で生まれ育ち、19歳で専門学校を卒業した後、神戸の洋菓子店「スイス菓子ハイジ」に就職しました。最初はカフェのフロアスタッフからのスタートでした。

2000年に独立して、「パティシエエス・コヤマ」をオープン。現在は兵庫・三田市にブーランジェリー、ショコラ専門店、カフェなど7店舗を展開しています。2011年からはチョコレートの本場であるパリの品評会に出品するようになりました。

今でこそ、パリ以外にもニューヨークやロンドンなど世界各地のコンクールに出品していますが、最初に「SALON DU CHOCOLAT Paris(以下、サロン・デュ・ショコラ)」に出展し、「C.C.C.(Club des Croqueurs de Chocolat/フランスの権威あるチョコレート愛好家協会)」に出品したときは、恥をかくつもりでの挑戦でした。

賞をいただく自信など全くなく、それでも行こうと思ったのは、東日本大震災があったからです。その当時、日本の食の安全は崩壊したと言われていて、「何とかしたい!」という気持ちがとても強かったです。

震災はあったけれど、日本人が世界に誇れる歴史文化や能力は変わらないはず・・・。チョコレートの本場フランスで、僕の作品が何か1つでも通用したら、日本のみんなに勇気を与えられるのではないかと考えたんです。結果、C.C.Cでは最高位のタブレット5枚を獲得することができ、サロン・デュ・ショコラでも、外国人としては最も栄養ある「外国人最優秀ショコラティエ」を受賞することができました。

京都生まれの僕は、パリ生まれのパティシエとは味覚が異なります。昆布やカツオ等の出汁を活かす薄味文化で育ち、素材の繊細な旨味を感じることのできる舌がある。また、ヨーロッパの人たちの知らない「和」の素材を使うので、チョコレートとの新鮮なマリアージュを生み出すことができます。


2016年10月に行われたのC.C.Cに出品した4つの新作

国際コンクールの審査は、これまで開催国である欧米の人々の感覚が基準になりがちでしたが、少しずつ変わってきました。僕を含め、様々な国の審査員が増えたことによって、審査基準もグローバルな公平性を保とうとする流れになりつつあります。

例えば「○○のような酸味」と評しても、その「○○」という食材自体を知らないと味の想像もつきません。つまり、いわゆるコンクールでは“審査員の味覚”がどれだけ優れているかが実は非常に重要なんです。
次ページ > 美味しいのは当然、その上を目指す

編集=筒井智子

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事