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2016.12.14 08:00

日本のミスコン、今と昔[オトコが語る美容の世界_2]


この成功に周りが興味を示し、これ以降日本全体でミスコンブームになっていく。街でも新聞でも開催、参加する人もレベルがあがり、途中、ミスターコンテストなる「美男子コンテスト」も毎日新聞の前身の出版社主催で行われた。

こちらは気品ある男子コンテストとなり、優勝者は華族の前田家の跡取りだったそうである。現役の相撲取りからお坊っちゃんまで。今より昔のほうが緩く、コンテストも多彩である。空が広い明治時代らしいコンテストである。

美人は外見だけを売る広告宣伝や経済効果をもたらすだけではなく、文化の担い手でもあった。お歯黒や眉剃りを廃止させるなど、古い慣習を打破し、国際化するような側面も担っていた。衛生度もあがり、文化ももっと華やいでいく。

現在のミスコン事情も同じような背景で生き残っている。さらに現在は文化や教養の度合いがさらに増え、被災地巡りや国連大使のような仕事まであり、現代のジャンヌダルクとして美人の仕事はさらに重くなってきている。

美しさがビジネスになることは、欧州も日本も、世界でそんなに変わりないと思う。ただ、日本以外のたいていの国では、王様やお姫様のセレブ文化が美容やファッション社会に影響が大きくお姫さ様がいつも市民のお手本である。しかし日本はいつも民衆から発信、市井の文化が社会に広がっていく文化の市民主義が面白い。

なぜか日本ではロイヤルファッションやロイヤルヘアスタイルが流行することは聞かない。明治時代でも皇族の化粧やファッションよりも、新橋芸者ファッションが国民の憧れであり、時が経た今でも秋葉原の地元アイドルや渋谷ショップ店員のファッションが先端をいく。

炊事家事をしない証しだった欧州貴婦人ネイル文化は、自分でネイルが塗れてしまう器用さを持ち合わせる日本の女性社会では、お手本は隣のOLであり近所のママなのである。質素の美徳が日本の貴婦人の究極であり、むしろ豪華なファッションは、成金趣味として社会から疎まれていく。

余談だが、貴族の発案ではなく市民がはじめたミスコンを冠した浅草の展望楼は関東大震災で崩壊し、時を経て21世紀の今はパチンコ店になっている。ああ元に戻ったかな、という歴史の面白さがある。

文=朝吹 大

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