ブリヂストンの「ガバナンス改革」が成功した理由

ブリヂストン 津谷正明 取締役代表執行役CEO兼取締役会長 (photograph by Irwin Wong)


ーそれでも諦めなかった。

そうだ。振り返ると、アメリカの企業文化はワンマン体制で、その中で意思決定していく。しかしCEOが全てをマネジメントする1人体制では、持続的に成長し、持続的に利益を上げていくことはできない。経営の持続のためにはやはりガバナンスを1人の人間に頼るのではなく、システム化しなければならないことを痛感した。

この反省を踏まえ、米州事業ではCEOとCOOという2人体制の実験をすることにした。彼ら2人とはいかに改革を進めるべきか、これまでと比較にならないほどコミュニケーションを取り、議論をしながら体制をつくっていって、上手く回り始めた。

ーアメリカでの実験の成果を日本に持ち込んだのか。

わかりやすい例で言えば、私がCEOになった12年から、日本でもCEO・COOの執行2トップ体制を導入し、新しい経営チームをつくっていった。経営全般と戦略を主にCEOが、オペレーション全般を主にCOOが統括し、互いにチェックし合う。それぞれの役割と権限の分離・明確化や情報共有、意思決定プロセスでの透明性の向上を進めることにより、ガバナンス体制を強化している。

私たちが大切にしているのは、コミュニケーション、チームワーク、ボトムアップの3つ。2トップ体制で議論を重ね、経営戦略をつくるなど、機能していると考えている。

このように一方の地域で成果が出たことは、他の地域にも導入することを繰り返してグローバルでのガバナンス体制を整備していった。それ以外にも、日米欧のリーディングカンパニーがどのようなガバナンス体制や組織体制にし、経営しているのかをずいぶんと研究した。

そして、その研究成果を今度はアメリカで試し、成果がでればまた日本に戻していくという、実験と勉強を積み重ねた。社外取締役を積極的に取り入れたのも、その結果だ。これらのことは他社の体制をそのままコピーしたのではない。

ー継続的改善の結果だと。

その通りだ。トライ・アンド・エラーから学んだことは大きい。ただ注意してきたのは、原点を失ってはいけないということだ。守るべき原点と改革、この両方のバランスが取れないと、持続的に成長し、持続的に利益を上げていくことはできないと思っている。

ブリヂストン◎2012年に津谷がCEOに就任して以来業績は急上昇し、15年12月決算では連結売上高3兆7,902億円(過去最高)、連結純利益2,842億円。世界タイヤ市場シェアは1位。世界150カ国超で事業展開。企業文化、経営人材、経営体制でグローバル化を進め、断トツを目指す。

つや・まさあき◎1952年、東京都出身。都立青山高校、一橋大学卒業、シカゴ大学経営大学院修了。76年、ブリヂストン入社。主に国際渉外畑を歩み、2012年、代表取締役CEOに就任(この年に社長職廃止)。13年から会長職を兼務。

文=鈴木裕也

この記事は 「Forbes JAPAN No.28 2016年11月号(2016/09/24発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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