コーポレート・ガバナンス(企業統治)の真の目的は、企業の本来の姿である「稼ぐ力」を強化することにある。“失われた20年”で低下していた日本企業の国際競争力を復活させ、世界と伍して持続的に成長していくためには、効率的かつ革新的な経営を実現していく必要がある。これを後押しするのが、実はコーポレート・ガバナンスなのである。
2014年、安倍政権が成長戦略としてコーポレート・ガバナンスの強化を掲げた。これを受けて、翌15年には金融庁・東京証券取引所はコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)を策定。日本企業はこれに対応することを求められた。
“枠組み元年”に一石を投じる
しかし、一部の企業はこれを経営の締め上げと捉え、「どうして欧米流のガバナンスを日本に導入する必要があるのか」など、コーポレート・ガバナンスに懐疑的な姿勢を見せた。また、多くの企業はこれに本気で取り組んだわけではなく、社外取締役の数などの数字合わせをするだけの対応で終わらせた。当時のメディアは「コーポレート・ガバナンス元年」などと報じたが、現実は「コーポレート・ガバナンス“枠組み”元年」と言ってもいいレベルの取り組みになっていた。
そんな現状に一石を投じたのが、日本取締役協会が主催した「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー」の表彰だった。02年の設立時から、企業成長の仕組みとしてのコーポレート・ガバナンスの普及・啓蒙活動を続けてきた日本取締役協会は、「コーポレートガバナンス・コードに準拠し、ベストプラクティスを実現する企業を発掘・表彰することで、残りの企業群に啓蒙を行いたい」と、この企業表彰を実施することにしたのだ。
「コーポレートガバナンス・オブ・ザ・イヤー」選考の審査委員長で、元日本取引所グループCEO、現KKRジャパン会長の斉藤惇は「日本流のガバナンスにこだわった結果が“失われた20年”であり、国際競争力の低下なのではないか」と、“コーポレート・ガバナンス懐疑派”の主張を退けた上で、こう続ける。
「企業の持続的な成長を実現し、効率的かつ革新的な経営を後押しするためにも、コーポレート・ガバナンスは必要。企業表彰制度を設けたのも、ガバナンスを強化することで、実際に好業績を持続させている企業を表彰によって浮き上がらせることによって、コーポレート・ガバナンスの普及につながるはずだ」