この分野でキャリアを積もうとする女性たちは、より大きな課題に直面する。多くは男性の同僚たちに比べ、家庭で過度に重い負担(育児や家事など)を負っている。一方で、同じように努力の成果を上げてきた男性たちに比べて、有効な指導を受けることができない。
これらに加え、女性たちには性的な嫌がらせという不愉快で恐ろしい負担ものしかかる。ミシガン大学のレシュマ・ジャグシー博士が率いるチームは先ごろ、キャリアの浅い女性医師らが経験するセクハラに関する調査結果を公表した。筆者も参加したこの調査では、科学分野で教育を受け、2006~09年に米国立衛生研究所(NIH)からキャリアアップのための支援を受けることが決まった男女1,000人以上から回答を得た。
調査の結果、性別による偏見やセクハラに関する男性と女性の経験には、非常に大きな違いがあることが分かった。女性の70%は医大に在学中、性別に基づく偏見による判断や対応を受けたことがあると回答。これに対し、同じように答えた男性は22%だった。また、セクハラを受けた経験がある女性が30%だった一方で、男性はわずか4%だった。
組織の対応が不可欠
男性でも女性でも、職場でセクハラを受けることがあってはならない。最も嫌がらせの対象となりやすいのは、組織において力を持たない人たちだ。そして、嫌がらせをするのは女性キャスターからセクハラで提訴され、辞任に追い込まれた米FOXニュースのロジャー・エイルズ最高経営責任者(CEO)のように力を持つ人たち、あるいは組織内の時の権力者たちが、そうした嫌がらせの存在を認めたがらないことを知っている人たちだ(例えば、FOXニュースで女性たちにセクハラを働いてきたその他の男性従業員たちのように)。
ジャグシー博士はこうした結果について、「調査結果は、私たちが社会として、どれほど(あるべき状況)からかけ離れているかということを改めて突きつけるようなものだ。特に、医学生の半数を女性が占める現在において、私たちはこの分野における最も優秀かつ才能ある学生たちのやる気を損なわせ、真の潜在力の発揮を妨げるような行動を許すことはできない。最も優秀な学生たちは、大半が女性なのだ」と述べている。
セクハラは、強く優秀な人たちにも、自分自身の価値に対する疑問を抱かせる。自分に非があるのではないかと考えてしまうのだ。学部長をはじめ医学部で部下を持つ立場の人たちや組織のリーダーたちは、部下たちがキャリアに関する不安を抱くことなく、セクハラについて報告しやすい環境を作る必要がある。