カリフォルニア州エメリービルにあるZymergenの研究所に防護服を着て入ると、ロボットたちが絶え間なく遺伝子を組み替え、生産した微生物の特性をテストしている光景を目にする。Zymergenが顧客から受ける依頼は、食べ物の味の向上からステルス爆撃機のコーティング強化まで多岐に渡る。Zymergenの特徴は、微生物の開発プロセスを無人化していることで、その実態は半分がロボット企業で、半分がソフトウェア企業といったところだ。
Zymergenのジョシュ・ホフマンCEOは、同社と他の研究所の差について「グーグルがアルゴリズムによって検索技術を自動化し、一気にヤフーを追い抜いた状況に似ている」と説明する。
Zymergenの顧客にはFortune 500の企業や、アメリカ国防総省の機関であるDARPA(国防高等研究計画局)などが含まれ、顧客の規模や質でも競合企業に大きな差をつけている。同社はさらにリードを広げるべく、シリーズBで孫正義率いるソフトバンクなどから1億3,000万ドル(約136億円)を調達したことを明らかにした。このラウンドには、他にもData Collective and True VenturesやTrue Venturesなどの既存投資家たちが参加した。今回の出資を機に、ソフトバンクのマネージングディレクターであるディープ・ニシャールと、前米国エネルギー長官のスティーブン・チューがZymergenの取締役に就任した。
Zymergenによると、チューは同社への参画に当たってどの投資家よりも入念に精査をしたという。Zymergenに感じた最大の魅力は、同社が開発した技術がヘルスケアや農業、工業、軍需産業などに転用でき、技術が使われるほどノウハウが蓄積され、同業他社に対して優位性を構築できる点だ。「アップルがZymergenの打倒を目指して1億ドルを費やしたとしても、絶対に実現できない。それは、アップルが人員を雇い、Zymergenの技術が模倣できるようになる頃には、Zymergenがはるか先を行っているからだ」とData Collectiveのマネージングディレクター、マット・オッコは話す。
顧客には米国防総省DARPAも
Zymergenは知的財産に関わる機密情報を扱っているため、顧客名を公開していないが、ホフマンによると各分野で世界トップクラスの企業が多く含まれ、その大半はリピート顧客だという。彼らはZymergenに多額の報酬を支払っているが、自社開発すればその3倍から5倍もの費用が掛かるという。「我々の提供価値は、高い経済性ということに尽きる」とホフマンは言う。