1. コーポレートガバナンス(企業統治)の重要性の増加
上場企業であれば、コーポレートガバナンス・コード(企業統治の指針)を表明し、株主に対して真摯(しんし)に開かれた、正しい経営で高い成長をしていくことが望まれるようになった。また、社外取締役や社外監査役によるチェックも厳しくなった。
そのような原則論のなか、「上司の命令だから」と言って不正に手を染めた社員は同罪になる。「間違っていることは間違っている」と正しく“吠える”必要がある。
2. 社員の地位はかなり守られている
勤務態度のよくない社員を辞めさせるのは極めて厄介だ。特に、遅刻も欠勤もないが適当に手を抜くタイプの社員を辞めさせることは不可能に近い。同様に、上司に批判的だという理由で辞めさせることも難しい。
一方で、会社に対して不満を重ねて辞めていく人は少なくない。私自身もそうして辞めたことがあるので、気持ちはわかる。ただ、もし改革の道筋が明確であるならば、残ってそれをやるのもひとつの道。それが私の言うところの「社員の虎」だ。
3. 転職も起業も思うがまま
不正があるなら、それを正すことが長期的には会社のためになる。探せば味方になる人が社内にもいるはず。また画期的な改革案があるなら、同じように社内で協力者を探すとよい。きっと同じように思っている人はいるはずだ。
もっとも、高い職業倫理と高度な専門性をもつ人は必ず活躍できる。転職も起業も本人の決断次第。「社員の虎」を追究できるところで力を発揮すればよいし、資金の手当がつき、お客様や仲間のサポートが得られるのならば、「ベンチャーの虎」や「ヤンキーの虎」になって大暴れする道もある。
とはいえ、読者諸賢の多くは会社員だろう。もし会社に不満があるから起業を考えているのならば、まずは不満そのものに向き合うことをおすすめしたい。「会社の虎」が増えれば、日本株式会社もきっとその力を取り戻すだろうから。
藤野英人 ふじの・ひでと◎レオス・キャピタルワークス代表取締役社長。東証アカデミーフェローを務める傍ら、明治大学のベンチャーファイナンス論講師として教壇に立つ。『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(講談社刊)など著書多数。