ライフスタイル

2016.10.22 15:00

「日本一短命の町」に企業が続々と参入する理由


生活習慣病を予防する食品を

現在約40社以上に及ぶCOI参画企業の顔触れは多彩だ。医療機器、製薬、食品、IT、通信、電機、精密機器、環境、小売業、教育、生命保険など、様々な業界を代表する国内外の有名企業が軒並み名を連ねる。
 
現状では、参画企業は岩木健康増進プロジェクトへの「人的協力」という形でCOIに加わっている。あくまで青森の短命県脱出が目的の取り組みであり、マンパワーを供出する見返りとして、ビッグデータの解析利用が認められている。

「COIへの貢献度によって評価される部分が大きい。参画企業は、岩木健康増進プロジェクトなどでの協力をすれば、それだけ出費は増えるがリターンも増える。言い換えれば、ブロジェクトに対する本気度によって、得られるメリットも違ってくるという仕組みです」(村下教授)
 
COI参画企業の一つ、カゴメ株式会社イノベーション本部自然健康研究部・菅沼大行は言う。

「当社が手掛ける『スルフォラファン』というブロッコリーに含まれている成分を研究するなかで弘前COIの存在を知りました。認知症予防機能との関連を研究されている先生のお話を聞き、抗酸化物質をもつ野菜とと健康の相関関係を研究できないかと考えるようになったのです。

健診の血液検査で血中抗酸化物質濃度を測定し、それがどんな疾患や予兆因子と関連するのかを解析しています。将来的には、疾患になりにくい食品やサービスの開発、食育への活用に結びつけるのが目標です」
 
日本一の短命県が人海戦術で始めた“大逆転”の取り組みは、今年、12年目を迎えた。最先端の技術と融合し、国家的事業に成長した。そして今、職場や学校に広がり、青森だけでなく、全国、そして世界の健康づくりに役立つ可能性を持ち始めたのだ。参画企業の担当者の一人は、「中路先生の口癖です」と、この事業をこう表現する。

「アンダーワンルーフ(ひとつ屋根の下)」

文=長田昭二 イラストレーション=東海林巨樹

この記事は 「Forbes JAPAN No.27 2016年10月号(2016/08/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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