ドン底から復活したウェアラブルの老舗「ガーミン」 創業27年の歴史

Photo by Sean Gallup/Getty Images

ガーミン(Garmin)のクリフ・ペンブルCEOは、カンザスシティ郊外の並木路をジョギングすることを毎朝の日課にしている。51歳のペンブルは細身の体躯で1マイルを8分以内で走り抜ける。

ペンブルの片腕にはランニングウォッチ「Garmin Forerunner 235」が、もう一方の腕にはアクティビティトラッカー「Garmin Vivosmart HR+」が装着されている。Forerunner 235は距離とペースを測定し、Vivosmart HR+は心拍数とステップ数を測定する。ペンブルはかつて、音楽を聴きながら湖のマリーナで小休止をとっているときに車にはねられた経験があり、それ以来走りながら音楽を聴くことを止めた。

「常に周囲に注意を払っていなければ不意打ちを食らうことを学んだ」とペンブルは話す。

2007年のiPhone発売で大打撃

皮肉にも、ペンブルがCEOを勤めるガーミンもライバル企業の不意打ちにより、事業が大きな打撃を受けた過去がある。車載用GPS端末のパイオニアだったガーミンは、GPS事業だけで最盛期には年商の4分の3に当たる25億ドルを稼ぎ出し、2007年10月に株価はピークの120ドルを記録した。

しかし、その直前の6月にアップルがiPhoneを発売してグーグルマップを使うドライバーが増加すると、ガーミンのGPS事業の売上は3年間で10億ドルも減少し、時価総額の90%を失った。

2013年にガーミンの共同創業者でビリオネアのミン・カオからCEOの座を引き継いだペンブルは、新事業の柱としてウェアラブルに目を付けた。ウェアラブル業界では、チップの価格が劇的に下がったことで製造コストが下がり、FitbitやJawboneなどのスタートアップが脚光を浴びていた。ガーミンは、アスリート層向けにスタイリッシュで高価格帯のウェアラブルを開発し差別化を図った。

ペンプルの戦略は大当たりし、昨年のウェアラブル事業の売上高は5億6,500万ドル(約567億円)と、過去2年間で8倍に増加した。株価はかつて15.17ドルまで下げたが、この1年で33%上昇し、最近では49.08ドルを記録している。
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編集=上田裕資

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