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2016.09.23 08:00

「家の資産価値」を長持ちさせる、住宅診断のすすめ[日本の不動産最前線 第5回]

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住宅市場ではこれから面白いことが起きる。「新築の時にその価値が最も高く、10年で半値、25年程度で価値ゼロ」といったこれまでの常識が覆されることになる。

「住宅の寿命は30年」。おそらく多くの方がこうしたアナウンスをうのみにしていることだろう。しかし残念ながらそれは間違い、勘違いだ。

国交省発信による木造住宅の寿命は27年ないしは30年、マンション(RC/鉄筋コンクリート造)は37年としているケースが多い。「木造寿命27年」の根拠とは実は「取り壊した住宅の平均築年数」。現存している建物の中には築30年を優に超え、50年、60年あるいはそれ以上長持ちしている建物も多く、実態を反映した数字であるとはまったくいえない。

次に「木造寿命30年」の根拠。これは「ストック(現存する住宅数)数をフロー数(新築数)で除したもの」で「サイクル年数」という概念を使って、参考値として便宜的に算出したもの。したがってこれも木造住宅の寿命を実体的に表していない。

「マンション寿命37年」の根拠はやはり「建て替えが完了したマンションの平均築年数」。ということは、築年数がさらに経過しても現存するマンションはいくらでもあり、これも寿命を表したものとはほど遠い。

なかには、木造住宅の減価償却期間が22年、鉄筋コンクリート造が47年であることを引き合いに出し、これを建物寿命と結びつける向きも多いが、これまた大いなる勘違い。減価償却とは、建物部分を、劣化に応じて経費化するための数字に過ぎず、建物の寿命とは何ら連動しない。例えば米国における建物の減価償却は、どんな構造であっても一律に27.5年だが、これとは無関係に売買査定や融資のための担保評価は行われている。

住宅の寿命に関してはいくつかの研究成果がある。建築寿命に関する研究(鎌谷・小松/2011)では、建物の寿命について、人間の平均寿命を推計するのと同様の手法を採用し推計した結果、木造住宅の平均寿命は64年としている。

マンション(RC/鉄筋コンクリート造)の寿命には諸説ある。例えば、68年(小松/2013「建物の平均寿命実態調査」)、117年(飯塚/1979「建築の維持管理」鹿島出版会)、120~150年(大蔵省主税局/1951「固定資産の耐用年数の算定方式」)など。実際には配管の種類や箇所にも大きく左右されるが、思いのほか長持ちする印象ではないだろうか。
欧米の多くの国では築年数によらず建物のコンディションだけに着目して資産評価を行う。建物の状態が一定水準以上であれば、むしろ築年数が経過するほどその価値を増す傾向にある。
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文=長嶋 修

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