人と人とのつながりがビジネスを生む、「共感経済」という考え方

公益社団法人 日本青年会議所第65代会頭 山本樹育 (吉澤健太 = 写真)


「その一環として、ソーシャルアントレプレナー(社会起業家)を育成する委員会をJC内に発足しました。まだ、ソーシャルビジネスを立ち上げるためのレクチャーをしている段階ですが、JCメンバー外の人にも呼びかけて参加者を集めました。とにかくビジネスを使って社会を良くする、変革をしていくという強い意識で望んでほしいと参加者には求めています。成功事例ができるとJCメンバーが経営する企業も、『うちの会社も自分の会社で儲けながら世の中を変えるようなものを、自分の会社の製品やサービスを使ってやってみようか』と、新たなビジネスチャンスへ目を向けるきっかけにもなるからです」

ボランティア・サービス・ワンデイ・プロジェクト(VSOP運動)もJC内でスタートさせている。JCのメンバーに共通することは本業を持っており、ほとんどが経営者の立場にある。その彼らがお互いの本業を結び合わせ、定期的に協力や協働して地域貢献や社会貢献を行うというものだ。

糸魚川のシャトルバスもこの運動の一つであるが、北海道の留萌JCでは「音楽合宿の街 留萌」という取り組みをしている。

「これは我々が行った夏のサマーコンファレンスの地域再興政策コンテストでグランプリを受賞した企画です。市の施設整備も整ってきており、学生を中心に合宿客が押し寄せて賑わいを見せています。地元の主婦たちが食事作りにボランティア参加するなど、多くの方に支援されるようになってきているようです。

目に見えないことですが、これらの事業には、人と人との心をつなぐ共感や感動が集まってきているのです。目に見えない資本を使って、目に見えない価値を生み出す『共感経済社会』のロールモデルともいえるもので、成功事例が増えれば、『JCってなかなか面白い取り組みをするな』と他者からも、さらに共感してもらえることになっていきます。

地域の人が協力し合い、地元を活性化させると本業にも何かの形で返ってくるものです。足元を見直しただけなのですが、実はパラダイムシフトが起きている。

私は、幸いにもJC関連の活動を通し、CSRのリサーチやTOYPでの体験、BOPビジネスなどを学ぶ機会に恵まれました。これらの経験の積み重ねで、今後の企業人は単純に経済面だけを捉えてビジネスをするべきではなく、経済を一つの手段として世の中をより良く変えていくべきだと悟ったのです。そのためには地域の再生を促し、地域内、地域と都市、地域と世界と、それぞれで循環する経済の流れを太くする仕組みづくりを確立する必要があり、私はそれを全力で築いていきたい。

また、自分がJCの会頭として、一歩先の視線を持ち、概念を広めるだけではなく、多くの社会実験を率先し成功事例をメンバーに共有化させることが重要だと考えています」

山本樹育◎1977年、大阪市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。2000年7月山本貴金属地金株式会社に入社。経営企画室室長など を経て、14年、同社取締役副社長に就任。05年大阪青年会議所に入会。13年理事長。日本青年会議所では、11年に日本経済成長戦略委員会委員長。 11〜12年、JCIAPDCカウンシラー、14年に副会頭、翌年に専務理事を経て、16年会頭に就任。

椎名 玲 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.26 2016年9月号(2016/07/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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