人と人とのつながりがビジネスを生む、「共感経済」という考え方

公益社団法人 日本青年会議所第65代会頭 山本樹育 (吉澤健太 = 写真)


同年世界会議直前の9月に大阪青年会議所主催で、「TOYP」(The OutstandingYoung Persons)というフォーラムが開かれた。1981年から国際的な民間ネットワークの構築を目指し、毎年行っていたが、この年のテーマが「世界平和」であった。

「大会開催までの2年間に、世界のCSRを研究して国内の事例を作り、その成果をまとめたのです。海外視察も実施し、私が韓国とパナマを、他メンバーがフィンランドと西アフリカのブルキナファソと世界4カ国を回りました。

CSRは基本的に『社会に対する利益還元』として法令厳守や商品・サービスの提供、地球環境の保護、従業員の人権尊重などが求められているものです。日本では企業などの寄付やボランティアと混同されることがありますが、お国が違うとその在り方も違うものです。各国での状況を調べていくうちに、日本らしいCSRとは何かを考える機会を持てました。日本人としての心を基軸にして、共感性を大切にしながらCSRを根付かせていくことが、これからの企業には必要だと思いました」

TOYPはいまでも継続されている。毎年5名のゲストを招いており、歴代メンバーには、アップルコンピュータの共同創立者であるスティーブ・ウォズニアック氏や、環境活動家のレスター・ブラウン氏などもいる。

「私が運営委員長を務めた10年のゲストは、世界一児童買春が深刻な国で子どもたちを救うドクターや、貧困から生まれる紛争を防ぐための生活改善NGO代表などで、彼らの口から語られる内容はどれも深く考えさせられるテーマでもありました。中でも、印象的だったのはアメリカ人のジャーナリスト、ジェシカ・メイベリーさんの『ビデオボランティア』活動です。貧しい人々の現実をありのままに撮り、SNSなどのネットで伝えることで、貧困問題を解決しようと孤軍奮闘している彼女の話を聞くうちに、自分の中にも『何かしなくては』と熱い気持ちが湧いてきたのです」

「紛争ダイヤ」から視えたもの

「彼女のスピーチを聞きながら、頭に浮かんできたのが、コンフリクトミネラル(紛争鉱物)のことです。アフリカのコンゴ紛争の原因や武装組織への資金源となっていると言われていますが、目の前の携帯電話に入っている金属を奪い合うために貧しい子どもたちが死んでいるのかもしれないのです。

私は本業が貴金属を扱うビジネスをしていることから、『ブラッド・ダイヤモンド』という映画にもなった『紛争ダイヤ』の存在を前々から知っていました。そのダイヤを巡っても武力争いが起きている。いくら業界が出所のわからないものを取引しないとしても、消費者が安く買いたいという意識があるかぎり、コンフリクトミネラルや紛争ダイヤもなくならないのです。

これらのことからも、一つの商品から自分と世界が密接につながっているという事実が見えてきます。しかし、ネガティブな面ばかりを見るのではなくて、おおよそのものが経済で結びついているならば、逆に世界をより良く変える手段として経済を用いれば最強の協力者にもなってくれることに気づきました」
次ページ > BOPビジネスに着目

椎名 玲 = 文

この記事は 「Forbes JAPAN No.26 2016年9月号(2016/07/25発売)」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事