「ロボットは必要ない、早く帰れば生産性は上がる」―UN Women事務局次長

UN Women ヤニック・グレマレック事務局次長


谷本:国または地域によって、女性の活躍を阻害する要因は違いますか。

グレマレック:社会規範によりますね。ある国では、男性の職業と決められた仕事があり、女性は就くことができなかったりと、女性に開かれている扉は国によって違います。それらは法律や制度だけの問題ではなく、男女それぞれに何が適しているかを決めている社会規範によるものです。一刻も早く、女性の人権がどこの国でも尊重される世界にしたいと思っています。

谷本: 韓国やドイツ、イギリスでは、国のリーダーとして女性が活躍していますが、日本では大企業や政治の世界で女性のリーダーが多くありません。どうしたらこの状況を変えられるのでしょうか。

グレマレック:女性の大統領を見て育つ3歳の女の子は、大統領は女性がなるものだと思うかもしれません。こうやって意識が変わっていきます。そういった意味で、ロールモデルを多く作ることは、とても重要です。

その意味で、政党が女性議員を登用したり、企業が女性の重役を登用したりするのも大切なことです。そのためには様々な方法がありますが、その一つとして、一定の割り当て(クオータ)を決めることは、とても有効です。

たとえば「ある期日までに役員の30%を女性にする」と決めると、どこの国でも最初は「無理です」「十分な数の候補者がいません」という声があがります。しかし、とにかくやりなさいと突っぱねると、あるとき、急にすべてが可能になります。第1段階では「不可能」という声を聞き、第2段階では「可能」という声に変わり、第3段階ではもはや割り当て制度さえ不要になります。

それはなぜか。企業や政党は、多様性があると効率が高まるということに気がつくからです。会議にタイプの違う人が参加していると、思いもつかなかったアイデアが出て、政策や計画がより効率的になるのです。

谷本:そのような変化を迎えるまでには、通常どのくらい時間がかかりますか?

グレマレック:その国の社会規範によりますが、多くの国々は、積極的な努力を始めてから20年以内に第3段階にたどり着いています。根本的変化には一世代必要なので、すぐに着手するのがよいでしょう。

谷本:安倍晋三首相が「2020年までに、ビジネスと政治の指導的地位にいる人の3割を女性にする」と目標を掲げましたが、達成の見込みはどれくらいあると思われますか。

グレマレック:とても良い目標ですよね。ジェンダー平等と女性のエンパワーメントについての政策は散見されますが、日本の政策「ウィメノミクス」は、それを新しい経済政策のパラダイムの一部としているという点で非常に強いです。

その目標値だけでなく、保育施設への投資や残業時間の削減、「重要なのは生産性で、むやみに仕事に時間を費やすべきではない」と周知することで、いろいろな局面で進捗し、可能性はどんどん高まることでしょう。

ウィメノミクスは、日本ならではのオリジナリティの高いミッションで、多くの国がとても注目しています。もし日本が成功すれば、他のアジア諸国等、伝統的社会にとって大きな意味を持つでしょう。
次ページ > ジェンダー平等は、女性の問題でなく社会の問題––

インタビュアー=谷本有香 構成=星野陽子 写真=藤井さおり

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事