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2016.07.30

インドが中国に追いつくために必要なこと

インド準備銀行のラグラム・ラジャン総裁(Photo by Hindustan Times / gettyimages)

かつて中国とインドは、世界で最も人口が多く、そしてとても貧しい国だった。そして今もなお、世界で最も人口が多い国ではあるが、貧困からは脱却した。

中国は世界2位の経済大国となり、1人当たりGDPは6,417ドル(約68万円)とインドの3倍以上に成長した。

特に注目すべきは、2つの国の格差は、インドのナラシンハ・ラーオ首相(1991~96年)がいなければもっと広がっていただろうということだ。ラーオ首相は1993年、中央政府が主導した1970年代の政策は失敗であり、市場に適した新たな政策が必要だと主張。インド経済を国内外の投資家に開放する必要性を国民に説いた。

また自らのメッセージをはっきりと伝えるために、ラーオ首相は公邸に400人の官僚と閣僚を招待。手厚くもてなした上で、中央政府主導の政策を厳しく批判し、その場にいた官僚や閣僚こそが問題の一部なのだと告げた。

現在のインド政府の官僚たちは、70年代、80年代、そして90年代初頭の官僚たちに比べればずっといい仕事をしている。それでも中国の官僚たちには及ばないことが、1人当たりGDPの格差に見て取れる。2015年12月時点で、一人当たりGDPは中国が6,416ドル、インドが1,806ドルだった。

中国は、インドが正しく行えていない多くのことを、正しく行っている。だからこそナレンドラ・モディ首相は、400人のインドの閣僚と官僚を中国に派遣し、中国がいかにして高い経済成長率を維持しているのかを学ばせるべきなのだ。

インドの官僚たちが中国から学べることの一つは、いかにして与信(融資残高)の対GDP比を引き上げることだと、インドの中央銀行であるインド準備銀行のラグラム・ラジャン総裁は言う。

最近のインタビューでラジャンは、インドの与信の対GDP比が50%であるのに対し、中国は250%だと指摘。また、もしもインドが中国の2桁成長に追いつきたいのであれば、マクロ経済を安定させるためのシステムを構築する必要があると語った。

だが問題は、中国の与信(融資残高)のかなりの部分は、生産的な活動よりも、国有企業の救済や建設バブルのさらなる刺激のためにばら撒かれていることだ。「GDPの2.5倍にも達していると推定される負債に対処する代わりに、議員たちは新たな融資の大盤振る舞いで事態を悪化させている」

というわけで、インドがこの分野で中国から学ぶことができるのかについては、きわめて懐疑的だ。

ロングアイランド大学ポスト校のウダヤン・ロイ教授(経済学)は、インドの官僚たちが中国から学べることとして、中国より大きく遅れている人材育成と、意義あるビジネスを頓挫させる民衆の抗議行動への対処法を挙げる。

「中国はシンガポールから多くを学んだ」とロイ教授言う。「インドは中国から学ぶことができる。ただし中国がしたように、インドもまた、学んだことを自国の状況に合わせて変更・修正することが前提だが」

編集=森 美歩

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