EU離脱で「勝手にしやがれ」 パンク精神で反撃する英テック企業たち

ロンドンにあるテック起業家のためのTechHub (Photo by Oli Scarff/Getty Images)


しかし、ミグノットはポイント制の導入によって軋轢が生じたり、官僚主義がはびこることを懸念する。「どちらも成長スピードの速いスタートアップにとって最大の障害だ」と彼は話す。

人材不足が懸念されるのはエンジニアばかりではない。「国民医療サービスを支える医師や看護婦が不足すれば、起業家や社員たちが安心して生活できなくなる。また、レストランやホテルで働く非熟練労働者の移住も同時に認めなければならない」とミグノットは言う。

その一方、ミグノットは起業家の多くがグローバル展開を目指し、一つの国に束縛されることはないことに期待を寄せる。「英国は世界で最もオープンな国の一つで、自由市場を尊重してきた。一回の国民投票でその伝統が崩れることはない」と彼は話す。ミグノットは次のようにツイッターに投稿した。

「我々はこれからも英国とEUへの投資を続ける。テクノロジーに国境はない」

フィンテック企業を直撃するEU離脱

スタートアップの中でブレグジットによるダメージを最も受けるのは、ロンドンに本拠を置くフィンテック関連の企業だろう。EUの単独市場から脱退することにより法規制への対応がこれまで以上に困難になり、成長を阻害しかねない。海外送金サービスのトランスファーワイズやペイメントサービスのGoCardless、P2PレンディングのFunding Circleなどのスタートアップにとっては、ウォール街に匹敵する世界的な金融センター「シティ」に隣接していることが大きな強みとなっていた。

「フィンテックの投資家にとって英国の魅力は薄れてきている」と不動産投資を手掛けるBrickVestのエマニュエル・ルミノーCEOは話す。現在、ルミノーは拠点をパリかベルリンに移すことを検討している。「何れの都市もフィンテックのハブとして機能しており、事務所の移転はEUの投資家を獲得する上で理に適っている」と彼は言う。
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編集=上田裕資

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