樋原:日本はハードウェアに強みがあると言われ続けているものの、さほど上手くいっていないように感じます。何か良いアイデアはありますか?
ウッザマン:「MADE IN JAPAN」の強みというのは、長期間故障しない点と信頼度の高さです。おそらく日本のエンジニアのマメさが背景にあるんでしょう。アメリカでは開発さえできれば後はほとんど手をかけませんが、日本では発明した後のプロセスも非常に重視しますよね。だから、アメリカやイスラエルのエンジニアが何かを発明して、仕上げを日本のエンジニアに依頼するというような協力関係が今後増えていくと良いなと考えています。
あとは組織の中にもダイバーシティを入れていくことでしょうか。すでに取り組み始めている大企業もありますよね、役員に外国籍の人材を入れるとか、社員の一定数を国外から採用するとか。スタートアップも同様に、新しいものを発明するとき、日本人だけで作るのではなく2割は海外のエンジニアも雇いましょう、という考えが当たり前になれば、世界規模のものができると思います。
樋原:多様性の重要さについては日本企業も理解してはいますが、あまりにスピードが遅い。日本の大企業はグローバル化の必要性を口にしつつ、実際に採用する際は日常レベルの日本語ができないとオファーを出しませんから。
潮目が変われば一気に変わりそうな気はしているんですが、そのきっかけをどうやって作るのか、まだ答えを模索中です。
谷本:本日は貴重なお話をありがとうございました。
アニス・ウッザマン◎Fenox Venture Capital 共同代表パートナー & CEO。シリコンバレーにてフェノックス・ベンチャー・キャピタルを設立。主に初期投資とファイナルラウンドを専門とし、インターネット、ロボット、AR/VR、IoT、ヘルスIT、フィンテック及び最新技術分野への投資を行っており、ユニークなモデルとグロ-バルなコネクションを使い、新時代のベンチャーキャピタルを運営。現在、全世界で20億~200億円の13のファンドを運営している。
樋原伸彦◎早稲田大学ビジネススクール准教授。1988年東京大学教養学部卒業、東京銀行(現・三菱東京UFJ銀行)入行。世界銀行コンサルタント、通商産業省通商産業研究所(現・経済産業省経済産業研究所)客員研究員、米コロンビア大学ビジネススクール日本経済経営研究所助手、カナダ・サスカチュワン大学ビジネススクール助教授を経て2006年立命館大学経営学部准教授。2011年から現職。米コロンビア大学大学院でPh.D.(経済学)を取得。専門は金融仲介論、コーポレートファイナンス、特にイノベーションのためのファイナンス。