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2016.06.29 08:00

日本の大学研究室に眠る「技術」を世界へ発信せよ

(左から)早稲田大学ビジネススクール准教授 樋原伸彦氏、ベンチャーキャピタリスト アニス・ウッザマン氏、フォーブス ジャパン WEB編集長 谷本有香

(左から)早稲田大学ビジネススクール准教授 樋原伸彦氏、ベンチャーキャピタリスト アニス・ウッザマン氏、フォーブス ジャパン WEB編集長 谷本有香

日本からイノベーションを起こすためには何が必要なのか? そんな答えを探し求めていた2人が出会い、行き着いた結論とは。シリコンバレーの著名なベンチャーキャピタリストであるアニス・ウッザマン氏と、早稲田大学ビジネススクール准教授の樋原伸彦氏に話を聞いた(第1回第2回はこちら)。

谷本有香(以下、谷本):日本のVCや大企業は、良いプロダクトやサービスを見極める「目利き力」が足りないとの指摘もあります。

樋原伸彦(以下、樋原):テクノロジー関連でいうと、東大や京大などには面白い研究をしている若手の技術者がたくさんいます。ただ残念な点が2つあって、1つは若手の研究者たちが、研究の成果を商品化することに対してメリットを感じていないこと。もう1つは、英語での発信力。論文などアカデミックな発信はできても、商品化に向けた発信のできる人材がほとんどいません。だから日本語のできない海外のVCをはじめ、グローバルでの知名度がとても低い。

日本の目利き力がないというのは一理あるのかもしれませんが、まずは発信する側の意識を変える必要があるのではないでしょうか。シンガポールやイスラエルに行くと、20代前半の若者でもVCとの交渉の仕方など、ルールを完璧に理解しています。そこに日本の同じ年代の若手研究者を連れて行っても、勝負になりません。やはり教育から変えていかなければならないのかなと思っているんですが、アニスさんはどうお考えですか?

アニス・ウッザマン(以下、ウッザマン):同感です。日本でもイノベーションやアントレプレナーシップの大きな波が来ていますが、その土壌は教育機関が担っていると思います。米国の大学をみると、スタンフォードもMITもアントレプレナーシッププログラムを用意するなど、起業を応援するような文化がありますから。

樋原:日本は大学の研究者とビジネスコミュニティの距離が遠いように感じます。アメリカでは研究者自身が起業するケースもありますが、周囲にコンサルタントやサポートしてくれる人材がいて、起業後のCEOは研究者自身ではないケースが多いですよね。

ウッザマン:日本の大学の研究室には、世界で勝負できるレベルの技術がたくさん眠っていますし、大企業にもすごく優秀な人材はいるのに、その素晴らしい技術と優秀な人材が結びついた企業は一向に現れません。スタンフォードの学生だったら、とっくに世界規模の企業にしているはず。私に時間があればそうした眠った技術を使って社長をやりたいくらいです(笑)。

谷本:日本に技術があるにしても、これからどのような分野に注力していけば良いのでしょうか。

ウッザマン:日本のロボット技術はかなりすごいですよ。なぜロボット技術に注目しているかというと、ロボットにAIが搭載されることで、人間の代わりにロボットが大きく活躍する時代が近い将来やってくると考えているんです。

もう1つはゲーム技術。漫画文化から影響を受けていると思いますが、これは日本独特の強みですね。VRの技術も盛り込んで、日本が得意とするストーリー性の高いゲームをどんどん作って欲しいと思います。

ロボットとゲーム、この2つの分野において日本は特に強いです。そもそも日本のハードウェアは「MADE IN JAPAN」の強みがあるので、上手く活かしてほしいですね。
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構成=筒井智子 写真=藤井さおり

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