谷本有香(以下、谷本):日本企業は今、これまでの国際化とは何だったのかを問われているように思います。
樋原伸彦(以下、樋原):日本は世界第3位の経済大国なので内需はありますが、多くの日本企業は内需さえ押さえておけば良いだろうと考えてきたのではないでしょうか。これほど国際化が叫ばれているのに、グローバル展開することに躊躇している企業が多い。これではスケールしていくことは難しいでしょう。
谷本:起業前のアイデアがそもそもスケールしないものや、グローバル化しにくいものが多い、だから小さくまとまってしまうとの声もよく耳にします。それはアイデアの問題なのか、もしくは海外展開するという気概がないからなのか、どのようにお考えですか?
アニス・ウッザマン(以下、ウッザマン):後者だと思います。やはり起業家が最初からグローバルレベルで考えていないケースがまだまだ多いです。日本の人口は高齢化の影響で縮小しており、実際の消費者は4,000〜5,000万人しかいません。消費者の数が減っているならば、最初からグローバルレベルでのアイデアを元に起業すべきでしょう。
また、日本は海外に対して、日本独自の良さをほとんどアピールできていないのも問題です。例えば、インドネシアには海外のVCが数多く参入しています。つまり、インドネシアは海外のVCに対して、自国のスタートアップの魅力をアピールできているわけです。企業がイノベーションを起こすためには、政府がグローバル化の後押しをすることも重要です。
樋原:日本政府もいろいろな政策は行っていますが、アイデアの必然性ではなく成功事例を重視する傾向があります。僕が何らか政策のアイデアを出すと「海外で成功した例はありませんか?」と質問されるんです。
谷本:経産省では、日本の大企業にどうやってイノベーションを起こしてもらうかに注力し始めています。日本の大企業の役割についてのお考えを聞かせていただけますか?
ウッザマン:日本の大企業の役割を語る前に、シリコンバレーにおけるスタートアップのエコシステムがなぜ成功しているのかを分析してみましょう。それには、4つの要因があります。
1つ目は、アドバイザーやメンター。起業経験があり、アドバイスできる人の数が他の国や地域に比べ、たくさんいます。2つ目は、インキュベーターとアクセラレータの存在。日本では、まだまだ数が足りません。3つ目、投資家の数。投資家にはエンジェル投資家とVCの2種類ありますが、日本では両者とも足りません。4つ目が大企業の役割に関わってくるもので、これこそがシリコンバレー成功の大きな秘密だといわれています。それがEXITの機会。
米国内のEXITの9割は、吸収合併。吸収合併を繰り返すことによって、大手企業たちはトップに居続けようとするんですね。