弾劾手続きをめぐる上院での20時間に及ぶ審議を経て、上院で採決が行われた結果を受け、ブラジル初の女性大統領であるディルマ・ルセフは、5月12日朝、職務停止処分となった。今後は上院で、無責任な財政運営を理由に弾劾裁判にかけられることになる。
ルセフの職務停止を受けて、副大統領のミシェル・テメルが大統領代行に。12日、すぐに新たな暫定政権の閣僚を発表した。その閣僚全員には、ある共通点がある。全員、男性なのだ。ブラジルには1億700万人の女性がいるというのに、テメル暫定政権は1970年代以降はじめて、閣僚に女性を一人も含まない政権となった。
現地紙フォルハ・デ・サンパウロのブロガー、マノエラ・ミクロスは、女性閣僚がいないことには「象徴的な意味合い」があり、「このような多様性の乏しいグループが率いる国の国政がどうなるかを、雄弁に物語っている」と語った。彼女はまた、新内閣が男性のみで構成されていることは、今後「不平等が当たり前と見なされる」ことを意味する可能性もあると考えている。
初の女性大統領が姿を消したことに加え、新内閣が全員男性であることで、多くの有識者がブラジルの今後の女性登用について懸念を募らせている。ブラジルでは下院議員513人のうち、女性はわずか53人。政治の世界における女性登用では、世界で115位だ。“女性党”という政党もあるが、同党の議員のうち女性は10%しかいない。
格差は政治の世界だけにとどまらず、深刻な経済的影響ももたらしている。2013年の統計値によれば、ブラジルの就労人口の44%を占める女性は、平均的に男性よりも高い教育を受けている。なのに世界銀行の報告によれば、女性の自給は依然、男性よりも25%低いのだ。
最近では、ある雑誌がテメルの妻を紹介した写真に「美しい、少女のような主婦」というフレーズを添えたことに対して、ネットが大炎上。女性の役割に対する見方が以前よりも保守的なものに変わりつつあることに、多くの人が不快感を示した。
そしてルセフ政権に起用された女性たちも、必ずしも女性の権利擁護のために戦っていたわけではない。実際、農業畜産食糧供給大臣だったカティア・アブレウは、複数のフェミニスト団体から批判を受けていた。