テクノロジー

2016.05.12 08:00

急成長の動画SNS「フリッパグラム」、42億PV/日を達成 スナップチャットとも連携

Roman Pyshchyk / Shutterstock

Roman Pyshchyk / Shutterstock

動画SNSアプリ「フリッパグラム(Flipagram)」の閲覧数が1日あたり42億回に達した。この数値はアプリ内での閲覧とインスタグラムやフェイスブック経由の閲覧数を合算したもので、前年同期の16億回から急激に増加した。

フリッパグラムは動画や写真、テキストと60秒以内の音楽クリップを組み合わせた“フリッパグラム”あるいは“フリップ”と呼ばれるコンテンツを作成し、共有できるアプリ。楽曲はiTunesやスポティファイで購入することができる。また、作成者のブログなど外部サイトにリンクを張ることもできる。

閲覧回数は、動画が再生された瞬間や写真が閲覧された瞬間にカウントされる。同社によると、同様のカウント方法を採用しているスナップチャットでの動画の閲覧数は1日当たり100億回以上だ。フェイスブックは動画が3秒以上再生された場合にカウントしているが、2015年に発表したところによると1日の閲覧回数は80億回だった。

フリッパグラムの共同創業者のファルハード・モヒットCEOは「我々は動画でストーリーを語ることに早くから着目しました。動画の人気は世界的に上がっており、最も簡単に動画を作れるのがフリッパグラムです」と語る。

MAUは3,600万人を突破

約2年半前にスタートしたフリッパグラムは昨年7月、7,000万ドル(約76億円)をセコイア・キャピタルがリードするシリーズBラウンドで調達している。調査会社Pitch Bookによると同社の企業価値は約3億ドル(約328億円)に達した。フリッパグラムの月間アクティブユーザー数は2015年12月時点で3,600万人。これまで2億人以上がこのアプリを使用し4億3,000万のクリップを作成したという。クリップには平均30の動画や写真が含まれ、長さは平均30秒だという。

フリッパグラムは、他のSNSやメッセージングアプリなどと、ミレニアル世代を巡る熾烈な争いを繰り広げている。アメリカでは携帯電話で費やされる時間の5分の1をフェイスブックかインスタグラムが占めている。

スナップチャットがニールセンに依頼した調査によると、アメリカでは18~34歳の6%しか一般的なテレビ局を視聴していないのに対し、スナップチャットを利用している割合は41%に上る。スナップチャットのアクティブユーザー数は1日当たり1億3,000万人と言われている。スナップチャットの利用時間は1人当たり1日平均25~30分間で、3分の2のユーザーが毎日コンテンツを作成しているという。

スナップチャットの動画も保存可能

スナップチャットはコンテンツが24時間以内に消えてしまうことが売りだが、フリッパグラムはコンテンツを保存する目的で使われている。「フリッパグラムのユーザーの多くが、スナップチャットの写真や動画を保存している」とモヒットは言う。しかも、フリッパグラムではコンテンツをフルスクリーンで見られるようになったため、スナップチャットの縦長のコンテンツを表示するのにより適した形となった。

「失われていく記憶を残したいというユーザーの思いをフリッパグラムはくみ取っていると」モヒットは言う。「記憶は失われていきますが、ストーリーは永遠です。年を取るにつれて記憶の価値は高まります。記憶を捨てていくのは、若さゆえの過ちです」

フリッパグラムは特にミレニアル世代の女性の支持を集めており、コンテンツの内容は誕生日などの記念日に関わるものや旅行、友人、家族、ペットに関するものが多い。ユーザーにはセレブも多い。ジェシカ・アルバは最近、父親の誕生日に関するフリップを公開した。また、美容や料理、フィットネス、インテリアコーディネート、DIYに関するハウツー動画、そしてGoProなどを使った冒険を記録した動画も人気だ。

先日亡くなったプリンスへのトリビュート作品や、リップシンクやダンスの動画などもフリッパグラムで公開されている。ニュースに関する動画は、そのニュースが出たのとほぼ同時に作られることが多いという。人気の動画投稿者も出てきているようだ。

フェイスブックなどの巨大SNSがユーザーによるコンテンツ制作の減少を懸念している一方、フリッパグラムではコンテンツが増加傾向にあるという。アプリ内でのエンゲージメントを高めるために、アプリ内検索やリコメンドの改善も図っている。

モヒットによると、フリッパグラムのコンテンツはアプリ内でシェアされることが多くなってきてはいるが、依然としてインスタグラムやフェイスブック、YouTube、ツイッター、ピンタレストなど他のSNSでシェアされることが多い。インスタグラムでハッシュタグ#Flipagramの付いた投稿は800万件以上で、YouTubeでフリッパグラムを検索すると110万件ヒットするという。

「フリッパグラムはすでにたくさんのクリエイターらに使われています。それがこのアプリの強みです」とモヒットは語る。

フリッパグラムの認知度は世界的に高まっている。英デイリー・メール紙も有名人が結婚の記念にフリッパグラムを作成したニュースを、記事タイトルに「Flipagrams」という単語を用いて報道した。フリッパグラムの強みの1つに、ほぼすべてのメジャー音楽レーベルと全世界的なライセンス契約を結んでいることが挙げられる。「音楽は言葉なしで感情を表現できる。そのこともフリッパグラムの成功に寄与している」とモヒットは語る。

フリッパグラムは今年の初旬、1対1やグループ間のメッセージング機能を追加。コンテンツを閲覧できる人を友人や家族などに限定できる機能を追加することで、さらにエンゲージメントを高めようとしている。また、最近では「母の日」や「フード」「ライフスタイル」などのトピックごとにコンテンツをまとめることで、閲覧性を向上させた。

3,000万以上の楽曲を使用可能

ここ6か月では、使用可能な楽曲数を3,000万曲以上に増やし、使用できる長さを30秒から60秒に伸ばしたほか、動画編集の簡略化を図った。独自のカメラも開発し、使わない動画や写真を自動的に削除することで編集をスピードアップさせた。

「我々は今伸びている動画消費が可能なアプリであると同時に、音楽の使用権を持つという独自性を備えています。作成されるストーリーにおいて音楽の重要性は増しています」とモヒットは言う。

フリッパグラムは現時点で広告を掲載してないが、ファッションデザイナーや音楽レーベル、映画制作会社等、様々なクリエイターたちに利用されている。視覚に訴えるコンテンツは、プロモーションに適しているほか、エアビーアンドビーなどでの物件紹介でも活用が期待できる。

しかし、モヒットは最近流行の「ライブ動画」については将来性を疑問視している。視聴者に訴えかけるためには、より質の高い動画を作る必要があるからだという。

「ユーザーは未編集のライブ動画よりも、特定のイベントのハイライト的なコンテンツを好む」とモヒットは見ているのだ。

「我々は人々が自らの手で動画広告とストーリーテリング(物語を語ること)を推し進めていくことを可能にしたいのです」

編集=上田裕資

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