関係者によると、同社株の売却にはプライベートエクイティ投資会社の春華資本集団と厚朴投資管理が関心を示しているという。ブルームバーグは4月19日、中国政府系ファンド中国投資(CIC)が支援する投資家グループが、ヤムの中国事業の価値を70~80億ドルと見積もり、株式の過半数を取得する意向だと報じた。
中国にはKFCやピザハットの店舗が7,000以上あるが、2015年の既存店売上高は前年比4%落ちた。外部投資家が入ることで、不振が続く業績の回復も期待できる。上海の市場調査会社CMRのベン・キャベンダーは「中国の投資家は潤沢な資産の投資先を探しており、ヤムが資金を調達するのは難しくない」と語った。
しかし、ヤムの中国での見通しは楽観できるものではない。食の安全への関心の高まりと、消費者の嗜好の変化で、同社のマーケットシェアは下落が続いている。国際市場調査会社ユーロモニター・インターナショナルによると、ヤムの中国ファストフードマーケットでのシェアは2011年には40%あったが、2014年に28%、2015年には24%まで下落した。
マッキンゼーが3月に行った調査では、中国の消費者の50%が食生活において健康や栄養を重視すると回答するなど、消費者の健康志向は高まっている。
ユーロモニターのフードサービスアナリスト、エリザベス・フレンドは昨年のレポートでこう記している。「ヤム・ブランズの中国部門は長い間、同社の利益をけん引する成長のエンジンだったが、今では新興国が健闘する中で業績の足手まといになっている」
お粥や揚げパンなどのメニューも追加
ヤムズは古びた店を見栄えよくするため、植物や新鮮な食べ物の絵を飾る一方、現地の顧客の味覚に合わせて、お粥や揚げパンなどのメニューを増やしている。これに対しキャベンダーは「ちぐはぐな組み合わせ」と評価した。
現地の調査会社Daxue社CEO、マシュー・ディビッド-エキスパートンは「中国事業の先行きは、提供する商品よりも立地にかかっている。良い現地パートナーを得られれば、拡大の弾みがつくかもしれない」と指摘し、ヤムズは飲食業界が飽和状態にある北京や上海のような一級都市よりも、より小規模な都市に活路を見出すべきだとの考えを示した。
ディビッド-エキスパートンは、ヤムズがブランド力を生かすことで中国での復活は可能との立場だが、キャベンダーはマーケットが変化し、食の安全への関心が高まる逆風下でヤムが5年前のような高成長を見込むのは難しいと考えている。