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2016.04.22 15:00

「日米女性2人組」で切り拓く日本流社会的投資の道

[左]リサ・カーノイ[右]功能聡子 (photograph by Akina Okada)

[左]リサ・カーノイ[右]功能聡子 (photograph by Akina Okada)

バンク・オブ・アメリカのリサ・カーノイと、ARUNの功能聡子。その出会いが日本流社会的投資の未来を拓く。

「日本は、途上国への社会的インパクト投資を牽引するポテンシャルを持っている」。バンク・オブ・アメリカのNY市地域プレジデントであり、同行のプライベート・ウェルス・マネジメント部門、U.S.Trustの米国北部地域代表を務めるリサ・カーノイは言い切る。「市場経済と金融市場の規模はもとより、素晴らしい起業家精神を持ったロールモデルがいるからです」。

カーノイが言うロールモデルとは、日本初の社会的投資プラットフォームARUNの設立者、功能(こうの)聡子のことだ。バンク・オブ・アメリカが主催する世界的なメンタリング・セッション「グローバル・アンバサダー・プログラム」にて昨年10月、カーノイが功能をメンティーとして迎える形で2人は出会った。社会的投資が盛んなアメリカでも、途上国を投資の対象にしたARUNのような社会的投資のプラットフォームは多くない。

功能は、もともと地域開発の専門家だ。内戦が収束して間もないカンボジアに入り、現場でキャリアを積んでいた。

畑違いのファイナンスの世界に飛び込んだのは、伝統的な日本の金融・投資のあり方に突破口を見出したからだ。現地では、援助から自立した社会を築きたいという志高い社会起業家が、資金集めに苦労していた。中小企業に積極的に関わってきた歴史のある日本の投資家、金融機関であれば、彼らのビジネスアイデアを育てることができるのではないか。

「社会的な意義と収益。二兎を追う難しいラインをいくからこそ生まれる面白いイノベーションがあり、挑戦への応援者が現れる」と、功能は語る。2009年の発足当時はカンボジアに絞って投資をしていたが、14年からはインドにも進出し、東南アジア全体を視野に入れた活動に舵を切った。

しかし、資金を個人投資家に頼るARUNには、安定した資金の確保という点で課題が残る。「ポテンシャルはある。ただ、ファイナンシャルモデルについてはさらなる議論が必要」と、1週間のメンタリングを終えたカーノイは指摘した。個人投資家のみならず、機関投資家に多く参画してもらうことは必須の課題だ。

「寄付か投資、どちらかにしてくれ」そういう投資家も多い。しかし功能は彼らに根気強く「第三の道」を説く。途上国と草の根的なコネクションを持つことは、貴重な情報源の確保という意味でも、投資企業へのメリットになりうる。「無償の施しは長く続かないことを、日本人は感覚的によく分かっている。共にリスクを取ることへの理解は得やすいはず」と、功能は意気込みたっぷりに語った。展望は明るい。

水口万里 = 文 岡田晃奈 = 写真

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