—5時〜5時半に起床し、7時〜8時には会社到着と、朝の時間を大切にされていますね。
限られた時間のなか、朝を上手に使うことはとても重要です。自宅と会社の行き帰りはタクシーを利用するのですが、朝はスマートフォンで新聞をチェック、帰りは車窓の風景をしっかりと観察します。街の移り変わりや、道行く女性のお化粧やファッションが商品開発の参考になるんです。
—タイムマネジメントの基本方針はありますか?
名誉会長を務めている鈴木誠一は私の父でもありますが、幼いころから「時間は追っていくもの。決して追われるな」と叩き込まれました。ですから「約束の30分前には現地到着」は弊社の企業文化でもあります。実際、企画でも製品でも、締め切りより前に完成すると、とても得した気分になりませんか。自分が頑張ってつくりだした時間で「さあ、何をしようか」と考える、そのワクワク感がたまらないですよね。
もうひとつ心がけているのが、トレーニング系のものは期間を決めて集中的に行うこと。2015年11月は「英語プレゼントレーニング」を日曜午前中に受講しました。これが1年続くとなると嫌になってしまうけれど、1ヶ月全5回だと思えばすごく集中できる。自己啓発の時間は好きですが、負担にならないように時間を決めて参加しています。
—以前、「東京大学エクセクティブ・マネジメント・プログラム(東大EMP)」にも通われていたとか。
そうなんです。東大EMPは「将来の組織幹部、特にトップになる可能性の高い優秀な人材を半期に25名選抜し、全人格的な総合能力を形成させる」という目的で2009年4月に始まり、私は4期生として10年10月〜11年3月まで通いました。そのときすでに役員ではありましたが、「役員にも経営者視点が必須」という想いがあり、いまからでも学べるものはすべて学ぼうと。受講前に届く約100冊の課題図書は、経営は少しで、哲学や宗教、宇宙や科学といった本が主。毎週金・土曜の朝から晩まで、課題図書と講義をもとに、講師と受講者相互で議論を重ねました。
—東大EMPで得られた最大のものは?
「香り立つリーダーシップ」という自分のスタイルを得たことです。EMP参加前は、社長や経営者というものは見るからに強いリーダーシップが必要なのではないかと思っていました。でも、日本の頭脳を結集したような講師陣や受講者たちと触れ合うなかで、必ずしもそうではないと思ったんです。大事なことは「自分にしかできないことは何か」を考えること。ちょうど修了式の直後に東日本大震災が起き、非常な無力感に苛まれたんですね。当然、社内も暗いムードだった。そんなときにふと浮かんだイメージが、瓦礫のなかに咲く一輪のバラだった。バラは被災した人の直接の役には立たない。でもその香りに人は勇気づけられ、引き寄せられるのではないかと。正直いうと、EMPにはヘッドハンティングも兼ねて参加したのですが(笑)、自己の存在意義を見い出す結果になりました。
すずき・たかこ◎1962年、東京都生まれ。上智大学外国語学部卒業後、日産自動車、LVJグループなどを経て、2010年よりエステーに入社。フレグランス・デザイン、グループ企業戦略、グローバルマーケティングなどを担当し、2013年より現職。