櫻井稚子 ABC Cooking Studio 代表取締役社長 [CEOs LIFE]

photographs by yOU (Yuko Kawasaki)

1分1秒を大切にして将来の選択肢を増やす

国内135店舗、海外16店舗の料理教室を展開するABCクッキングスタジオ。現場スタッフから社長へと階段を駆け上った櫻井稚子社長が、公私ともに大切にしていることとは?

—社長業というお忙しい生活のなかで、体力・気力をキープするために毎日心がけていることはありますか。

まずしっかりと朝食を摂ることですね。私には6歳の娘がいるのですが、夜はなかなか会えないので、朝は家族そろって食事ができる大切な時間でもあるんです。そこで、できるだけ栄養価が高くて美味しいものを、主人にも娘にも食べてもらいたい。朝からそんなに凝ったものはつくれないけれど、納豆には刻んだオクラや梅干し、ちりめんじゃこを入れるとか、味噌汁も大根に油揚げ、ワカメなどの具だくさんにするとか、一食で栄養を満遍なく摂れるように気をつけています。もちろん、コミュニケーションもしっかりと。前日にあった出来事や感じたこと、考えていることを、3人で楽しくおしゃべりしながら共有します。いわば朝食は、娘への食育の場であり、家族団欒の場でもあり、全員の健康促進にもなるという、一石三鳥くらいの貴重な時間です(笑)。

—では、仕事中のタイムマネジメントで大切にしていることは?

やはり、ランチタイムや会議、会食ひとつとっても、「1分1秒を無駄にしない」という意識でいること。弊社には社長室がなく、社員が私に相談しやすい環境になっています。またランチタイムを社員と過ごしたり、会議も各部門と30分単位で毎日行ったりすることで、社員一人ひとりのアイデアや展望を共有するようにしています。やはりサービスや事業のヒントというのは、いちばんはお客様から得られますが、次に得られるのは社員ですから。とにかく、誰であっても1分1秒、互いに価値のある時間になるように。そうすることで、将来の選択肢が増えるという実感があるんです。

—その実感を得るきっかけは?

実は18歳のときにスキーで大怪我をしたんです。その道の権威といわれるお医者様に2度も手術していただいたのですが、それでも走るのはおろか、歩くのも困難になるだろうと……。でも私はどうにも納得がいかず、先生に頼んで24時間リハビリ体制を敷いてもらった。麻酔薬が自動で流れるよう管を体に装着してもらい、毎日欠かさずリハビリを続けた結果、1年後に歩けるまでになりました。いまは走れるし、普通に運動もできます。お医者様には「奇跡だ」と言われたけれど、私はそうは思わない。やると決めて実行すれば状況はいくらでも改善できる、ということです。月並みな言葉ですが、人生とは限りあるもの。したいことを選択できる人生を望むのなら、時間の使い方をしっかりと考えるべきだと思います。

—では、人生においてどなたか影響を受けた方はいらっしゃいますか?

割烹を経営していた祖母ですね。出される料理が美味しいのは当たり前、いちばん重要なのは、その料理に毎回愛情を注ぐこと。器も大切で、同じ料理でも盛り付け方や見せ方で、まったく違う印象を与えると。それから花や絵などで彩る空間づくり。つまり、料理と器と空間にお客様をお迎えする心を込めるということ、それが「真のおもてなし」だと教わりました。弊社は食にかかわるサービス業ですので、こういう精神を社員にも伝えていきたいと思っています。

さくらい・わかこ◎1973年、静岡県生まれ。静岡英和女学院卒。ヨーロッパ留学、技術者派遣の企業経営を経て、ABCクッキングスタジオに28歳で入社。店長、エリアマネージャー、人事部長、副社長などを経て、2013年、社長に就任。

堀 香織 = 構成 yOU(河崎夕子)= 写真

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