カナダのトロント・ドミニオン銀行の米国子会社TD銀行が先ごろ公表した調査結果によると、小規模事業者の多くは新規事業に関する目標達成のため、「視覚化」(写真を見たり、色々な考えをアイデアボードに書き出したりすること)を行っていることが分かった。
TD銀行は2015年12月から今年1月にかけて「視覚化」に関する調査を実施。小規模企業の経営者500人以上とインターネット調査に応じた1100人以上から回答を得た。その結果、事業に関する目標の達成をイメージ化している人の方が、していない人より目標達成に自信を持っていることが判明した。
イメージ化している人たちの中でも、ビジョンボードを作っている人はそうでない人に比べて2倍近く、何らかの方法で目標を達成する自信があると答えた人が多かった。また、回答者の67%が、視覚化は目標達成の可能性を高めてくれると答えた。
調査で明らかになったのは、主に以下の3点だ。
・3分の2近くが、目標の視覚化は明確な事業計画を策定するのに役立つと考えている。
・5人に1人が、起業するときにビジョンボードやその他の方法で視覚化を行っていた。さらにこのうち76%が、自身の事業は現在、起業時に目指した状況を実現していると答えた。
・起業を考えた当初からビジョンボードを使っていた人の82%は、すでに視覚化した目標のうち半分以上を実現していると答えた。
ミレニアル世代は目標設定における視覚化を重視しており、この世代の起業家にとっては特に、視覚化が重要だとみられる。ユーチューブなどをはじめ、デジタル・テクノロジーやソーシャルプラットフォームが存在する環境で育ってきたこの世代は、日常生活での出来事を伝える目的でも画像を使用してきている。
ミレニアル世代の起業家のうち約60%が、事業を始めた時からビジョンボードを利用していたと答えた。また、89%が事業計画の策定時に使用したと回答した。
成功につながる理由は?
TD銀行の小規模事業者部門のトップ、ジェイ・デマートは、言葉でも写真でも、グラフやその他の画像でも、視覚化されたものは事業の発展と経営者の判断に役立つと指摘している。
調査結果の分析にあたって同行は、金銭の感情的・心理的影響に関する研究を専門とする心理学者のバーバラ・ヌスバウムの協力を得た。ヌスバウムによると、個人的または金銭的な目標を視覚化することによって、私たちは目標に「より集中し、現実的に感じ、より実現性があると感じる」ことができる。さらに、私たちはそうすることで、実際にそれ(視覚化された目標の実現)に向かって行動するようになるのだという。
画像や写真、関連する物(生地の端切れやドライフラワーなど何でも)を描いたり貼り付けたり、言葉を書き込んだりしたビジョンボードを使うことで、私たちは複数の感覚において、そして経験に基づいた形で、目標を達成した状態に自らを没頭させることになるからだ。
ヌスバウムによれば、「こうした総合的な経験は私たちを感情的に、目標とその達成に向けたプロセスと結び付けてくれる。詳細に視覚化することに時間を費やすことで、私たちは掲げた目標と感情的により深くつながる」。さらに私たちは、「可能な限り現実的かつ人間中心に、詳細で感情のこもった形で、視覚化を行う必要がある」という。