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Tatiana Shepeleva / shutterstock

人工知能は人間の行動を予測し、我々を幸福に導くのか、もしくは......。台湾から世界に進出する米国帰りの研究者が話す、AIの未来。

いま、人工知能(AI)への関心は真っ二つに分かれている。人間の職業を奪い、殺傷兵器にもなる人間の敵か、あるいは幸せに導くテクノロジーか。2015年末、東京で開催された「アジア・イノベーション・フォーラム」で議論されたのが、まさに「AIは人間を幸福にしうるのか」というテーマだった。

国内外の知識人を集めたこのフォーラムで注目を集めたのが、台湾から来日した現在36歳、Appier(エイピア)のCEO、チーハン・ユーである。同社は15年11月に、米最大のベンチャーキャピタル、セコイア・キャピタルを筆頭に、日本のジャフコを含む計5社から約27億円の資金を調達。AIを使ったターゲット広告によって、1年弱の間に売り上げ600%超を達成。資金調達によって、次なる研究に大きな期待が寄せられている。「Appierの社名の由来は、Happier(より幸せ)なんです」と、ユーは笑みを浮かべる。

アメリカでAIを学んだユーのキャリアは、AIの進化にそのまま重なる。ユーはスタンフォード大学AI研究所で、機械学習技術「ディープラーニング」の世界的権威であるアンドリュー・エン准教授に師事。エンは、グーグルに招聘された後、中国の「百度」にヘッドハンティングされた世界トップのAI研究者である。「実は、最初のころは研究にのめりこめなかった」と、ユーは振り返る。

「1999年から台湾でコンピュータサイエンスを専攻していたころはあまり興味がもてなかったのですが、ある日、顔認証システムと出合い、人工知能に強烈な興味をもつようになったのです。その後はスタンフォード大学で自動走行ロボットやヒト型ロボット、トランスフォーマーロボットなどの研究開発にも関わりました。当時はまだ、コンピュータの演算能力や容量が限られており、アイデアはあっても、AIはすぐに現実世界で実用化されるものではありませんでした」

初期のAI研究は動物がヒントになっていたという。「動物の強みは“動き”です。4本足で取るバランスを、AIは学習しています。また、“群れ”をつくる動物たちの集団行動の解析や意志決定も研究されてきました」

04年から05年にかけて、ユーは自動運転車の研究開発で第一人者であるスタンフォード大学のセバスチャン・スラン教授のチームに参加。スランは、次世代技術研究所「グーグルX」の社長を務め、グーグルの自動運転車の開発に関わっている。

ユーとスランのチームは、05年度の自動運転車の米レース「DARPAグランド・チャレンジ」で優勝。その後、彼はハーバード大学医学大学院でポリオ患者の歩行を支援する自己適応型ロボティクスシステムを開発した。

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アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)が主催する自動運転車レースで、2005年、スタンフォード大学チームが優勝。
このとき、セバスチャン・スランが率いるチームにユーはいた。写真は優勝した車「スタンリー」。

こうしてAI研究の花道を歩んできた彼が、満を持して12年に母国・台湾で創業したのが、Appierであった。サンフランシスコのほか、東京をはじめアジア各地に拠点をもつ同社が手がけるビジネスは、「クロス・デバイス・インテリジェンス」という。

「消費者は、スマートフォン、PC、タブレット、スマートウォッチなど複数のデバイスで一日中やり取りしています。日本人は3台以上のデバイスを利用している人が49.1%と、アジア太平洋地域でもっとも多く、水曜にスマホの利用率はピークを迎えます。台湾とベトナムでは、水曜ではなく、日曜がピークです。国によって消費者の傾向は異なり、デバイスの台数と種類が多様化するなか、私たちのAIエンジンを用いてデータを抽出し、ユーザーがどのデバイスを使用しているのかを割り出し、効率的な広告戦略に役立てることができるのです」

つまり、いま個々の消費者はどんなデバイスを使い、何を見、どんな行動をしようとしているのか。それを予測して、広告を打つ。実に95%超の驚異的な的中率を誇る。

文 = 皆川 尚慶

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