アリババ傘下のサイトで偽ブランド品を売る30歳の女性、S・ツァイは、タオバオに2つの店を出店し、プラダ、フェンディ、バレンシアガなどのハンドバッグや服の偽物を売っている。
実は、彼女の店の商品はそれらのブランドの真正品を作る中国国内の工場で生産されたものだ。品質管理の担当者が何らかの欠陥を口実に製造ラインから製品を抜き取り、それを横流しするのである。
一部の業者は廃棄された生地や皮革などの原材料を手に入れ、真正品の工場で働く労働者を雇って模造品を作らせる。ツァイもその種の商品をタオバオで売っているそうだ。ビジネスは好調で、多い日には1万1,000ドルを売り上げることもある。
こうした模造品は簡単に発見できる。ブランドのロゴまで入れた完全なコピーでありながら、廉価で販売されているからだ。しかも彼女は「真正品ではない」とサイト上に明示している。
だがアリババの対応は鈍い。10年にツァイが模造品を売り始めた直後、仕入れ先の1つが中国の当局に摘発され、彼女の最初の店も閉鎖された。しかし数カ月後にツァイは同じ店名のショップを再開できた。アリババの担当社員に高価なディナーをふるまい、贈り物を渡すと、あっさり禁制が解けたのだ。そして彼女は同じ模造品をまた売るようになったのだ。これについてアリババの広報担当者は、「社員の不正行為は一切許容しない方針で臨んでいる」と語っている。
こんな経緯があったにもかかわらず、アリババの担当者はツァイのショップの販促策まで提案したという。アリババが再度、彼女の不正をつかむのに5年かかり、15年の半ばにツァイの2店目のショップを閉鎖。今度はさすがのアリババも簡単には再オープンさせていない。「異議を申し立てるには膨大な書類を提出しなければならない」と、ツァイはぼやく。
だが同情は不要だ。彼女の1店目のショップは、これまでと同じように多くの偽物を売り続けているのだから。