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2015.12.24 10:00

ゴールデングローブ賞:賞の受賞はチケットの売れ行きに影響するのか?

Anadolu Agency / gettyimages

映画の成功には3つの判断材料がある。まず1つ目は興行収入。2つ目は賞の受賞や映画批評家からの高い評価。そして3つ目はその映画の質だが、それは個々人の判断にゆだねられる。

第73回ゴールデングローブ賞のノミネーション作品が発表され、映画部門では「キャロル」が5つのノミネーションを獲得、「レヴァナント:蘇りし者」、「マネー・ショート 華麗なる大逆転」、「スティーブ・ジョブズ」の3作品がそれぞれ4つのノミネーションで続いた。

93人のメンバーで構成されるハリウッド外国記者協会が映画部門とテレビ部門で、米国内外の作品を審査し、受賞者を決定する。協会は年中作品の批評をしているが、実際にチケットを買って映画館に足を運ぶのは一般の人々である。ここで1つ疑問が出てくる。世の中に存在する様々な映画賞の受賞と一般の人々の評価には関連性があるのだろうか?

興行収入で言えば、「レヴァナント:蘇りし者」、「マネー・ショート 華麗なる大逆転」、「Joy」、「Concussion」が4強だが、その他の作品について、興行収入と受賞や高評価の公式を探ってみよう。「キャロル」は作品賞(ドラマ)と女優賞(ドラマ)にノミネートされ、今年映画評論家にもっとも高い評価を受けた作品として、どの映画祭でもチケットの売れ行きが好調だった。ゴールデングローブ賞発表日までの興行収入は280万ドル(3億4,600万円)、米国内では846,501ドル(1億300万円)だ。「キャロル」はまだ4映画館でしか公開されていないことを考慮しても、この数字は芳しくない。

しかし、興行収入の低迷がケート・ブランシェットの受賞チャンスを奪うことはないことは、過去に証明されている。ケート・ブランシェットはウッディー・アレンが監督をつとめた「ブルージャスミン」でゴールデングローブ賞やアカデミー賞など数々の賞を総なめにしたが、この作品は当初6映画館でしか公開されていなかったとはいえ大ヒット作の基準とされる3,340万ドル(40億円)、全世界で9,750万ドル(118億円)には遠く及ばなかった。

「Spotlight」にも注目だ。限定公開作品としてスタートし、週を経るごとに人気が高まり、11月20日時点で897の映画館で公開された。迫力あふれる演技と鋭い脚本に巧みな監督の技が光り、作品賞と脚本賞でノミネーションを獲得した。ノミネーションや作品を強く推す批評にも関わらず、米国内での興行収入は1,720万ドル(20億9,000万円)にとどまっている。

「スティーブ・ジョブズ」はマイケル・フェスベンダーの男優賞をはじめ、ケイト・ウィンスレットが助演女優賞、アーロン・ソーキンが脚本賞にノミネートされている。この作品は多くの批評家に支持される一方、公開から7週間の時点で米国内では1,800万ドル(21億9,000万円)、全世界合わせても2,430万ドル(29億円)と当初の予想に反して苦戦している。ヒットする要素は万全で、映画祭でも注目を集めたが、一般受けしなかったようだ。

その他のノミネーション作品には、米国内の興行収入が380万ドル(4億6,000万円)の「ルーム」、1,180万ドル(14億円)の「ブルックリンの恋人たち」、ノミネーション作品発表から12日間で370,895ドル(4,500万円)のチケットを売り上げた「The Danish Girl」などがある。これらの3作品はいずれも、女優賞や作品賞などで映画批評家の強い支持を集めている。

しかし、ここでちょっと考えてみよう。たとえば「Spy」は全世界で2億3570万ドル(287億円)、「オデッセイ」は5億7,250億ドル(698億円)、「トレインレック」は1億3,900億ドル(169億円)の興行収入をたたき出している。「マッド・マックス 怒りのデス・ロード」も3億7,580万ドル(458億円)だ。これらの高収益を上げた映画はすべて、まさに平均的なアメリカ人が実際に映画館で見た映画であり、もっとも人々に親しみやすい映画がマーケティングに成功し高い興行収入を稼ぎだしたという構図はわかりやすい。

それでは、様々な映画賞についていうと、チケットの売れ行きが賞のノミネーションや映画評論家の高いレビューを保証するのだろうか?少なくとも、映画が素晴らしければ人々はお金を払って見に行く。それでは賞へのノミネーションや専門家の高評価はチケットの売れ行きを左右するのだろうか?それについての答えはNoだ。もし影響を与えることができるとしても、映画が大コケしないための防波堤程度の役割しか成さないだろう。注目の第73回ゴールデングローブ賞授賞式は2016年1月10日に開催される。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

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