これら地区ごとに行なわれる会合の目的は、薬物問題の現状について話し合う場を提供することにある。
アメリカ全国保険統計センター(NCHS)によると、2014年には、オピオイドを処方された患者の中から18893人の死者を出し、その数は2013年から16%増加。また、ヘロイン使用による死亡も10574件と、前年から28%も増えている。オピオイド系処方薬による死亡者が増加した要因として政府が指摘しているのは、合成オピオイドだ。鎮痛剤として使われるフェンタニルやトラマドールが関与した死亡事故も、2013-2014年から79%増えている。
薬物管理政策局(NCHS)のマイケル・ボッティチェリ局長の主導で、12月16日にオクラホマで開催された初のフォーラムでは、公衆衛生や公衆安全はもとより、すでにオピオイド感染にさらされた人々についての対策も講じられた。
次回はコネチカットでの開催が予定されている。
緩和ケアの研究機関であるアメリカ・アカデミー・オブ・ペインマネージメントのボブ・トウィルマン事務局長は、インタビューの中で
「政府が新たにイニシアチブをとることは素晴らしいアイデアだ」と賛同しつつも、NCHSが今年のデータをどのように処理したかについては疑問だと語る。
「この一年でここまで急激にオピオイド系処方薬の過剰摂取による死亡者が増えたとすると、違法に生産されたファンタニルも、合法なオピオイド処方薬とひとまとめに扱われているように思われる。」とトウィルマン氏は推測する。
「毒物構成上で合法か違法を見分けるのは難しい。死因が合法のフェンタネルによるものだったのか、それとも違法に生産されたものだったかを見分けるのは事実上不可能に近い」
「違法と合法のものがひとくくりに扱われているとすると、そのことでオピオイドを処方すること自体に圧力がかかることにもなりうる。これまででさえ本来治療を必要としている人たちに薬が届かず、悲痛な訴えが聞こえていたというのに、今以上にアクセスが難しくなるかもしれない。」
オバマ大統領は今年9月、全国的なこの問題に対処するため、いくつかの新たなステップを導入した。処方する側へのトレーニングの強化や、治療によりアクセスできる体制も段階的に整えていく計画だという。
8月にこのプランが発表になると、NCHSのボッティチェリ局長は、麻薬売買がとくに密集しているエリア(HIDTA)で、ヘロインの取引や使用を削減するための予算に500万ドルは必要だと試算。およそ250万ドルは、15州にまたがる公衆衛生、地域安全向上を目指す活動グループと協力して、地域社会におけるヘロインの危険性に訴える『ヘロイン・レスポンス・ストラテジー』に宛てられるという。
また、HIDTA基金からは、アメリカ南西部の国境付近にある5カ所のHIDTA指定エリアでの活動に130万ドルが捻出される。
オバマ大統領が掲げる2016年度の薬物対策には、各州に追加予算を投じてPDMPs(処方薬を管理するプログラム)を強化することで処方薬やヘロインの乱用を予防し、中毒患者への治療の向上と拡大、さらには救急隊員がすぐにナロキソン(麻薬拮抗剤)を使用できる環境を整える計画も盛り込まれている。
「しかし大統領はまず、アメリカ食品医薬品局(FDA)をなんとかすべきだ。FDAはアメリカ疾病予防管理センター(CDC)が取り組んでいる、薬物の処方に注意を促す活動の妨げになるようなことばかり続けている。」
そう指摘するのは、オピオイドの正しい処方を推進する医師会(Physicians for Responsible Opioid Prescribing)のディレクターで、薬物やアルコール中毒患者の治療を専門とするフェニックスハウスのチーフ・メディアカル・オフィサーも務めるアンドリュー・コロズニー医師だ。
「FDAが人々の健康よりも、巨大なドラッグストアの利益を優先し続けるのなら、薬物問題はさらに悪化するだろう。」