SDRの通貨バスケットは、米ドル(42%)、ユーロ(37%)、英ポンド(11%)、日本円(9%)で構成されている。現在はIMF取引以外に利用されることはないが、IMFは緊急融資の額を決める際に利用。また、世界の中央銀行は外貨準備高の一部(3%相当)をSDRで保有している。
象徴的な出来事
NN Investment Partners(NNIP)のジャコ・ロウは、「中国にとって、SDR採用は象徴的な出来事だ。IMFが人民元は『自由に利用できる』通貨だというお墨付きを与えたとも受け取れる」と言う。人民元がSDRに採用された場合、その比重は通貨バスケットの15%程度になる見込みだ。
実は、8月11日に人民元が切り下げられたあと、SDR通貨採用に向けた資本勘定の自由化やマーケット測度の導入など、過剰介入も見られたが、実際の影響はほとんどない。もしSDRが国際取引に利用できなければ、人民元への大きな影響はないはずだ。ロウも、世界の外貨準備高を見ると、「やはり影響は小さい」と言う。
中国市場を専門とするロンドンの資産運用会社Sun Global Investmentsのサンジブ・シャーも、ロウと同じく「これは中国の経済発展を象徴する重要な出来事であり、中国の金融市場と通貨の国際化への重要な第一歩でもある」と述べているが、金融サービスで25年以上の経験があるシャーは、「実際に採用されるまでには10ヵ月かかるが、国際取引での人民元の利用拡大にもなるため、長期的な影響は大きい」とも言う。
ロウによると、ほかの条件が同じなら、中央銀行が人民元の配分を増やせば人民元は他の通貨よりも強くなるはずだが、人民元にとっても、ここ数年は通貨政策決定、世界的なリスクセンチメント、循環的発展のほうが重要になる。実際の影響も限定的であることから、投資の観点から言えば、NNIPは、「人民元のSDR構成通貨採用には賛成でも反対でもない」そうだ。
また、米国での人民元取引・決済の容認に向けた作業部会の設置も発表され、マイケル・ブルームバーグが議長を務めるほか、副議長にはメアリー・シャピロ、共同議長にはトーマス・ドナヒュー、ティモシー・ガイトナー、ヘンリ―・ポールソンが就任する。
作業部会は、米国の金融機関が容易に人民元を取引できる「枠組みやロードマップ」を作成し、金融機関の取引コスト削減、効率アップを実現する。さらに作業部会では、その進捗状況について定期的に報告し、人民元取引についての啓蒙活動を行う。
この後の9月25日の首脳会議で、オバマ米大統領と習国家主席は、二国間の通貨協力をより強化することで一致した。
ニューヨーク市長のブルームバーグは、「米国で人民元を取引する高度な仕組みを作れば、米国企業の競争力が高まり、金融部門や経済も活性化する」と言う。作業部会はまず、米国の大手銀行7行と中国の大手銀行5行を構成メンバーに組み入れる。