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2015.12.06 11:30

多くのCEOに欠落している秘密のスーパーパワー

djgis / Shutterstock

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「お前はクビだ!」これは不動産王から大統領候補に転身したドナルド・トランプ氏の決め台詞だ。この台詞を聞くと未だに恐怖で身がすくむ。トランプ氏がこう発言する時、ボディーランゲージでは明らかに「しくじったな。お前は負け犬だ」と告げている。トランプ氏の世界では、氏は常に勝者だ。失敗はいつも誰か別の人間のせいになる。そして失敗は「悪」だというだけではない。屈辱なのだ。

筆者には企業を経営する上で別の方向性が見える。脆弱性を見せることだ。自らの失敗を認める姿勢だ。リスクを冒すこと、失敗をすることはプロセスの一部だと従業員に理解させよう。それは成功を築く方法のみならず、業界に変化をもたらすほど強い会社をいかに築くかということだ。

失敗を認める企業文化は、経営トップから始めよう

失敗を認める文化は、経営者が自らの過ちを認めることから始まる。表に出るまで問題を修正してはならない。2008年のことを振り返ると、我が社は急成長を遂げ、その成長を維持するために最高執行責任者(COO)を迎え入れることが求められていた。我が社の最高顧問たちは人選に時間をかけるよう求めた。しかし筆者は別のことを考えていた。

1人の候補者は米フォーチュン500社にランキングされた会社の社長を務め、6,000軒の店舗と3万人の従業員を統括した経験のある人物だった。躊躇することなく、お墨付きのその候補者を招じ入れた。しかし残念なことに、この人物は我が社のコーポレート・カルチャーに合わないことが次第に明らかになり、事業に悪影響が出始めた。契約解除という点だけとっても、この人物の解雇は高くついた。
人選には時間をかけるべきということを、‐‐‐解雇するなら迅速に対応すべきということも‐‐‐身をもって学んだ。

意気消沈したこの出来事の後、後任のCOO探しには時間をかけた。逸材を見つけるため、国内線に何度乗ったか覚えていない。しかし点線の上にサインをした時、最適な人物を見つけたと確信した。その役員のリーダーシップの下、O2E Brandsに新規3社を加えることになった。

トップ企業においても、この文化が発揮するパワーは例に事欠かない。コーヒーチェーン世界最大手の米スターバックス・コーポレーションの最高経営責任者(CEO)ハワード・シュルツ氏が、数千人規模の従業員を対象とした大規模な一時解雇を断行した際に謝罪し、実際に涙を流したのは、それほど昔の話ではない。自身の失敗を認め、謙虚さを見せたことで、スターバックスは従業員思いの会社だということを、経営チームに気付かせた。

危険を承知で一歩踏み出すことで、組織内の信用を築くことが出来る。失敗を素直に認めることは、問題解決の最初のステップだ。

経営層から一般社員に広げるリスクテイクの文化

この考え方は、まず経営トップから始める必要があるが、そこで終わってはならない。組織の他の構成員も、失敗を怖がらないような余地を保つことが鍵だ。

競争の激しい市場では、リスクに対する冒険は許される。全ての挑戦がうまく行かなかったとしても、それは当然のことであり、失敗とイノベーションは1枚のコインの裏と表なのだ。

時には馬鹿げたアイディアが激しく議論され、失敗を恐れない姿勢からアイディアの芽が出て来る。こうしたアイディアが失敗することもあるが、大当たりする時もある。例えば、我が社がリスクテイクの精神を受け入れなかったとしたら、オーストラリアに進出することもなければ、10億ドルの収益達成について話し合うこともなかっただろう。

失敗を認める文化は日々のプロセスにも当てはめられる。我が社は毎朝全社員が出席する7分間の「熱血朝会」を実施している。良いニュースをおさらいするために集まっているのだが、一方で解決が急がれる緊急の課題も、包み隠さず公開する。

解決すべき課題は大きなものもあれば小さなものもある。しかしこの朝会で問題を共有し、解決に向け最初の一歩を踏み出すためのオープンな環境を提供することが出来る。例えば5年前、フランチャイズ加盟店の中でも主力級のパートナーが、全員を前にして「非礼を承知で言うが、自分のことを、この会社を次の段階へ引き上げることが出来るCEOだと思っているのか?」と尋ねた。

言うまでもなく、その言葉には傷ついた。と同時に、心に引っかかっていた自省の念が一気に膨らんだ。経営展望やイノベーション実行の意志はあったのだが、日々の業務を監督するスキルが不十分であり、我が社の急速な拡大に向けた戦略を立てる能力も足りていなかった。そこでこの問題に身を縮めるのではなく、COOを招聘し、「双頭体制」戦略をとることにした。筆者の情熱と、我が社のエリック・チャーチ社長が示す明確な方向性が組み合わさり、我が社の軌道は変わった。今となっては、聞きづらい質問をしてくれた人物に感謝している。

編集 = Forbes JAPAN 編集部

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